ビックリ・データ



 生命表というデータ表があります。各年齢ごとに何人の人が生存してしているかという表で、生まれたのはどの年齢でも10万人としたデータです。0歳は10万、40歳は約9万7千、80歳は5万5千です。各年齢の平均余命を計算するとか、行政の保健衛生施策の役立てるとかあるのでしょう。グラフにすると、右肩下がりですね。0〜20歳くらいまではほとんど下がりませんが、だんだん緩やかに下がってきて、60歳すぎから下がり具合がおおきくなり、80歳あたりからきつくなり、ようやく100歳手前から緩やかになりますが、110歳過ぎでゼロです(男の場合)。

 このデータ表は厚生労働省が発表しています。各自治体に住民が提出した出生届と死亡届を集計したものです。単純な集計です。出生届は生年ごとに、死亡届は没年と年齢を数えるだけです(性別は分けて)。氏名とか住所、死亡原因などの個人データは不要です。

 とはいえ集計作業は大変でしょうねぇ。0〜110歳の方の出生届は2億件を超え、死亡届も1億件ちかくあると思います。ビック・データにあたるでしょう。それが数千の自治体に散らばっているのだから大変ですね。

 保険会社はこのデータ表を使って生命保険や年金保険の保険料(掛金)を計算しています。ビッグ・データの活用ですね。と言うよりも頼っています。その昔、保険関係のソフトを担当したとき、生命表なるデータから掛金という情報が作られることにビックリしました。そして「保険は損しない商売だなぁ」としきりに感心したものです。そのうえ厚労省のホームページから簡単にタダで手に入ります。ますます美味しいですねぇ。

 最近、歩数計を身につけて「今日は歩いたなあ」「もっと歩かにゃ」とか楽しんでいます。小さな歩数計は1週間分しかデータを記録してくれません。毎日の歩数をパソコンに打ち込んで、体重や体脂肪率と一緒にグラフにしてみようかと思っています。以前、健康診断で「歩くように」とすすめられたこともあるので、グラフを印刷して健康診断に持って行こうかしらん…

 とある健康機器を開発したベンチャー・メーカーのウリは、計測データをスマホに転送して記録するので、スマホのアプリでグラフが見られるというものです。な〜るほど、数値を打ち込む手間が省けて便利だな、と感心しかけたのですが、スマホ??? スマホのアプリは計測データをメーカーに転送するのではないか? それを貯め込もうとしているんではないか? 図星でした。メーカーは商品発表会で「ビッグ・データが欲しいんです、そっちのほうが儲かるから」と正直に語っていました。

 どんなデータであれ、データや分析結果を見るのは人間です。理系の科学者の研究発表が問題になりました。たくさんの観察データと実験データを採ったのでしょうに。都合のいいデータだけを見て発表したのでしょうか? 研究者とはいえそれが生活の糧です。自己の職場上の立場や欲や見栄にかられた都合なんでしょうかね?

 あえて対抗するデータを見ないという発表もあります。テレビの評論家さんは自説にあったデータしか使いませんからね。「○○のデータによると…」なんてCMが聞こえてくると眉に唾しています。そいえば、電力会社はデータをほとんど公表しません。原発事故の後もなかなか公表しません。都合のいいデータは大々的に公表しますが…。政治家がデータをふりますと私の眉は唾だらけ。

 そもそも人間の脳は欲しいものしか見ないクセがあるとか。眼に入った情報をすべて意識していたら脳は大変なことになるのだそうです。であれば、データを見るときは、都合や欲や立場を乗越え、脳のクセをも乗越え、真摯な眼でデータと向き合わねばなりませんね。そうすれば、集めまくったビッグ・データを分析して、すてきな情報を引き出せるでしょう。コンピュータはその役に立つと思います。さて、ビッグ・データから保険の掛金のように驚愕の情報が出てくるのでしょうか?




厚労省の生命表
 4年に1度の発表で、グラフは第21回、平成22年のデータです。
 保健・衛生・医療などの技術や体制がすすむ一方、飢饉、流行病、大災害、戦争で、昔の生命表のグラフとは曲線が変わっているでしょう。

保険金の計算例
 短期(1年)生命保険で、死亡したら保険金が出るとします。50歳男の場合、51歳になるまでに亡くなる人数がわかるので、この方たちに払う保険金の総額は「保険金×亡くなる人数」。これを50歳の人数で割れば一人当たりいくら集めれておけばよいかが出ます。これが保険料(掛金)です。集めたお金は金融機関に預けるなどすれば利息がつきますのでこの分を安くして、お金を集めたり払ったりする経費を上乗せして保険料(掛金)が決まります。さらに年齢によって保険料(掛金)が違ってしまうので、年齢制限をしたり、同額になるように調整しています。

ビッグ・データで商売
 キップ代わりの交通系ICカードは、改札でタッチするだけで電車に乗れるのでけっこう便利です(それにICカード利用割引もあるのでお得?)。が、旧国鉄のJRがICカードの乗車記録を販売するというので話題になりました。→第86報「雲のむこう」

理系の科学者
 彼は、とある病気の患者の体液にいる菌が犯人とした研究発表をして、世界中で注目されました。患者と健康な人の体液をたくさん集めてデータにし、さらに患者の体液を健康な人に移して発病するかという実験をしたデータを集めて、間違いないと発表したそうです。後年、菌ではなく体液の中の別物が犯人とわかり、彼の発表はだれも見向かなくなりました。別物とはウィルス。彼が使っていた顕微鏡の性能では見えませんでした。とはいえ、データを真摯な眼で見たら菌が犯人と判定できたのでしょうか? 彼とは千円札の肖像になっている野口英世。

電力会社
 記者会見のインターネット中継を見ていると、記者たちが必死にデータ公表を迫ってる。そんなシーンがしょっちゅうです。



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