計算機資源



 注文を受けたソフトが完成しました。開発で使っているパソコンは何世代も前の古いものです。古いパソコンですからソフトの動作は遅いです。ですがこのパソコンで満足するスピードなら、新しいパソコンではもっとスピードが出るというものです。納品して動作確認をすると、自分でもびっくりするほどスピードが違いました。

 過去形で述べたのはかつてはそうだったからです。ところが今回は違いました。古いパソコンで作って、当社の最新のパソコンで動作確認をしたら、ものすご〜く遅いのです!

 新しいパソコンのスピードが遅いわけではありません。古いパソコンでは途切れ途切れになって見るに耐えない動画をスムーズに再生します。

 遅い! と気付いたのは、数千件のデータを処理する個所です。【開始】ボタンをクリックして一覧表ができるまで古いパソコンは何十秒ですが、新しいパソコンでは何分もかかるのです。ざっと3〜4倍もかかりました。0.1秒で終るものが0.4秒かかっても気付きませんが、10秒が40秒となるととっても遅いと感じます! 一覧表を作る条件によっては数万件のデータを処理するので十数分かかります。

 このソフトは大量のデータから抽出して計算・集計・分類・並べ替えた一覧表を作成するというものです。データを読んだり書いたりを何度も何度も繰り返しますが、大量のデータはあらかじめサーバーのデーターベースから転写してあるので、スピードのネックになるネットワークとかは関係ありません。一覧表を作るのはこのパソコンだけの機械処理なのです。なのに遅い。

 このソフトはマイクロソフトのオフィスのひとつのアクセスというアプリケーションで動くように作りました。遅いのは新しいパソコンに入れたアクセスのバージョン2010で動かした場合でした。試しにテスト用のソフトを作成して、アクセスの97、2003、2010の3つのバージョンで時間を計ってみました。2003は97の3倍、2010は2003の10倍もかかりました。これまで神話のように思い込んでいた「新しいほうが速い」は脆くも崩れ去りました。なんてことでしょう。

 地球の成立ち、氷河期とか間氷期とかの変遷を研究している学者さんが、盛んに「計算機資源」という言葉をお使いでした。コンピューター(計算機)がより高速でより大容量になったので、地球を細かく分割して、いろいろな要因を計算して積みかさねて… と計算機の発達がなければとても学問できないというお話でした。

 はたしてパソコンの計算機資源はどこに行っちゃったのでしょう?

 この仕事を始めた時代は、少ない計算機資源の中で、いかに効率よく設計しプログラムするのかが腕の見せ所でした。何でもかんでもコード化したり、ビット単位で記憶したり… 思い出したくないので細かい事は思い出せませんが、あの頃の工夫や苦労をまたやらなければならないのか、ああ、やだ、やだ。時代が逆行している!

 97を使えばよいのでは? と思われましょう。そうですよね。でもパソコンを新しくするとウィンドウズはセブンになります。セブンではアクセス97が動かないのです。アクセス2003なら動くので、それにしようにも、もう売っていただけません。

 あらら、もうウィンドウズ・エイトが出ていてセブンは売ってくれないようです。が、エイトは不人気でダンピング販売したとか。それに誰が業務用に使うのだろうかという代物だとのこと。まだ、試していません。

 え? エイトを追うようにオフィス2013が発売になっているって! アクセス2003も動かなくなって、プログラムを全面的に書き換えることになるのかしらん。そうしたら「ソフトは腐らない」とういう神話も崩されるのでしょうかね。

 充分に使えるのに、せっせせっせと新バージョンを出して、それまでのものは使えなくさせて買い換えさせるというビジネス・モデル(商売)って、マイクロソフトという独占がなせるわざですね。価格は総括原価方式なんでしょうか?

 用途と目的を限って、それなりのネットワーク設定をしておけば、かつてのウィンドウズとアクセスのほうが、よほど快適な処理が期待できます。

 ならば、新しいパソコンにかつてのウィンドウズとオフィスをセットにしたら売れるかもしれません。でも、そんな商売をしていると、グローバルな取引の妨害だとクレーム(因縁)をつけられちゃうのでしょうか? そうならないように交渉してくださいな、TPPに参加するなら。でも間に合わない? 間に合ってもむこうの言いなり??



テストの結果 → アクセス97:処理時間10秒 2003:30秒 2010:5分

学者さん → 阿部彩子 東京大学・大気海洋研究所・気候システム研究系・准教授
       「久米宏 ラジオなんですけど」でのお話し

新しいほうが速い → 第7報 ソフトのこころはハードなの
バージョン    → 第15報 バージョンアップ
ソフトは腐らない → 第29報 ソフトは腐らない
機械処理     → 第32報 力ずく

エネルギー資源の方面ではメタン・ハイドレード(冷凍メタン)採掘実験の成功がニュースになっています。これでエネルギーは地産地消できるから大丈夫? ところがアメリカ産シェールを輸入しないのはTPP違反だと因縁をつけられるのでしょうかね(ISD条項)。だとしたら冷凍メタンの開発は実験だけかも。

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