真犯人 警察・検察の取調べはとても過酷だそうです。「ムコウの話を押し付けるだけ、コッチの言うことは聞いてくれない」「ウソでも話をあわせて、早くこの場から逃れたくなる」などなど、とある経験者の方からお聞きしたことがあります。 話を押し付けてくるのは証拠があるからでしょう。脅迫メールを送信したパソコンが特定できたのです。メールを解析して送信したパソコンのIPアドレスが分かったのです。 IPはインターネット・プロトコル、インターネット用信号のやり取り手順とでもいいましょうか。アドレスはずばり住所。IPアドレスは、個々のパソコン識別番号です。車にたとえればナンバーです。 駐車違反の車はナンバーが証拠だ! という訳です。でもナンバーで判る車の持ち主が運転していたのでしょうか? 違反したのは運転手ですよね。IPアドレスが判明したからそのパソコンの持ち主が犯人とは決め付けられません。パソコンを使っていたのは誰かを調べなくてはいけません。 パスワードをいれないとパソコンを使えないように設定していたら、パスワードを知る者が犯人だということになりますが、若い男女の愛の巣のパソコンにパスワードだなんて野暮ですよ。私ゃいやだ、設定しません。 そうそう、担当者が席を外している時に、パスワードを知らない同僚が不正な操作していた、なんて事件がとあるお役所でありましたっけ。パスワードだけでは、証拠にならないかもしれません。 仮に使用していた人が特定できたとしましょう、車で言えば運転手が判明したわけです。パソコンはいくつもの作業を同時にさせます。インターネットの動画を見ながら、ワープロソフトで文書を書きつつ、表計算ソフトで資料をつくり、画像ソフトでデジカメの写真を取り込んで加工し、出来上がったらメールで送信、てなあんばいです。そうしている間にいつのまにかウィルスが勝手に脅迫メールを送ったのです。 走るか止まるかだけの車なら運転手が犯人といえるでしょうけど、パソコンではいえません。結局、真犯人と名乗る者から放送局や弁護士に送りつけた「ウィルスを使った」という告白メールで、捕まった人たちの冤罪が晴れたのでした。 IPアドレスだけでは証拠になろうがなるまいが、自分のIPアドレスを知らないなんて、無用心だと思いの方、確認してください。ネットワークのプロパティを見れば分かります。 たとえば 192.168. 1. 23. 四つに区切られた数値で構成されています。ひと区切りには0〜255が入りますので、約40億台分。 こんな番号、車のナンバープレートのようにパソコンのボディに書いていないし、シールも貼っていないぞ、説明書・保証書にも書いていないぞ、買った店の店員さんも教えてくれなかったぞ。そうです、パソコンにもともとついている番号ではありません。接続業者(プロバイダー)とインターネット接続の契約をした時に、業者が指定してきます。あるいは実際に接続した時に業者のコンピューターが勝手につけてくれます。後者の場合、接続するたびにIPアドレスが違うこともあるでしょう。 ルーターを使って1本の接続を何本にも分けて使用している職場は多いと思います。ご家庭でも使っているかもしれません。ルーターは業者と1つのIPアドレスで結ばれ、職場内のパソコンとはそれぞれ全く別の複数のIPアドレスを使って結んでいます。外の業者とは業者の指定するIPアドレス、内の職場側は任意にIPアドレスを設定できます。 接続業者でもルーターのように外と内を使ってIPアドレスを階層的につなげています。約40億台分ではとても間に合いません。ネットでつながっているのはパソコンだけではありません。携帯電話もスマホもタブレットPCも、職場のプリンタやスキャナも、ご家庭のテレビ、エアコン、電子レンジもネット接続するものはことごとくIPアドレスがついてますから。 これだけ面倒くさいうえに不定ともいえるIPアドレスをよく特定できたものと少しは感心します。がIPアドレスだけでは決定打ではなかったのですね。 そういえば、わが科学警察は真犯人と名乗る者からのメールのIPアドレスを特定できたのでしょうか? できていればトップニュースでしょうね。実は発信元を分からないようにメールを送るサービスがあるのです。真犯人と名乗る者はこのサービスを利用して放送局や弁護士にメールしたようです。ネットで検索すればサービスをすぐ見つけられますよ。雑誌にも紹介されています。 最近では、東電OL殺人事件、足利事件、布川事件、古くは免田事件、冤罪が晴れました。いったい何があったのかという真実を追求しなかったんでしょうね。こんなもんだろうと事務処理しているだけなんでしょうか? 真犯人はまだ捕まっていません。 |