拡張子 わが文化は長い言葉を略して使う得意技があります。ソフトウェアはソフト、パーソナルコンピューターがパソコン、スマートフォンがスマホ、ワードプロセッサーがワープロ。文字数が多いカタカナ語を略してしまいます。略すのは昔からで、テレビはテレビジョンの、フリマはフリーマーケットの略ですね。略が定着するともう日本語なんでしょうかね。 「拡張子」ってご存知ですか? 純な日本語で、広辞苑の六版には載っています。 パソコンはデータをファイルに納めて、そのファイルに名前をつけて記録します。ファイルの名前は2部構成で、好きな名前と「拡張子」でなっています。両者はピリオドで区切ります。好きな名前は好きに付けられるのですが、拡張子はそうはいきません。どのアプリが使うファイルであるかを表しているからです。ホームページは html、デジカメで撮った写真は jpg、てな具合です。 アプリを販売している会社は、たびたびモデルチェンジ(バージョンアップ)をします。アプリは腐りませんから永遠に使えます。新規機能が魅力的だとか、スピードが速いらしいとか、流行おくれだとかあれば買い換える気になります。ですから販売する側は、新機能だ、便利だとかを謳い文句にモデルチェンジをします。そうして開発する社員を囲っているのでしょう。うっかり馘首(クビ)にでもしたら、新しい会社をおこして対抗するアプリでも開発しかねませんから。 パソコンのハードはおっつけ壊れます。そこでパソコンを買い換えます。前のパソコンからアプリを引越しして使えますが、新しいパソコンに新しいアプリが廉価でついています。ならば買い換えちゃおう。てなわけで買い換えるたびにアプリのひとつのワープロの「ワード」も新しくなります。 さっそく新しいワードで文書を作ります。それをメールに添付して送ります。ところが先方は古いワードです。先方で文書を開こうとすると… 2003年バージョンが新しいワードだった頃は97年バージョンの古いワードでも開けました。ただし新しいアプリならではの機能は失われます。といっても新しいアプリの機能を使って文書を作ることはほとんどありません。ですからつつがなく古いワードでも開いたのです。エクセルも同様です。 2007年バージョンからは新しいワードで作った文書は古いワードでは開けなくなりました。メールで送られてきた文書をクリックしても「このファイルは開けません」のメッセージがでます。原因は文書のファイルの「拡張子」が違うからです。古いワード文書は「doc」新しいワードは「docx」。 「新しいアプリに買い換えさせろ!」というのが販売するマイクロソフト社の戦略でしょう。 それでも、良心の欠片か釈明の用意なのか、古いワードの形式で文書を作る機能がついていますので、他の人に文書を送る方は古い形式で文書を作りましょう。古いワード文書の拡張子(doc)のファイルができます。マイクロソフトはこのような注意をしません(ホームページで目立たないようにアナウンスしているかもしれませんが)。私どもは自動的に文書を古い形式で保存するように設定しています。 電力会社の地域独占をしのぐ世界独占のマイクロソフトはさらなる儲けのために懸命ですね。彼らの都合で彼らのルールを押付けてきます。よりによって拡張子を変更するとは… こちらの都合は考えていません。消費者は選びようがなく、しぶしぶ従うしかありません。残念ながらマイクロソフトに拮抗するソフトをつくる素振りはお国にも経済界にも見えません。 グローバル化を錦の御旗にして、関税を撤廃して自由貿易をはかるというのが話題のTPPです。参加したら農業も工業も医療も健康保険も、ウィンドウズのワードと同じ状態になりはしない…? なにしろ相手はマイクロソフトのようなウォール街の企業です。こちらのルールを無視してあちらのルールを押付けてくるんでしょうね。 先日ウィンドウズ・エイトが発売されました。また新たな押付けがやってくるのかと思うと、憂鬱な気分になります。
|