想定外? 「動きません!」「設計書と違いますよ」「あ、バグった!」「あはは、データがおかしい!」… プログラムのテストの担当者から容赦ない指摘。あれだけ丹念にプログラムしたのだから、「そんなはずは…」と咽まで出かかっているのを呑みこんで見直してみると、そこには「つもり」と「はず」の爪痕がくっきり。いくつになっても精進がたりません。ですから、テストを何度も繰り返して、大丈夫だとなってから納品です。 プログラムを組むというのは、屁理屈をならべること、いわば想定問答です。この場合はこう、その場合はそう、あの場合はああってな具合に理屈をならべます。優れた設計書って言ったって、考えられるだけの想定をならべたてただけ。ところが現実は想定外だらけ、だからトラブルがおきます。でなきゃ西暦2000年、合併した銀行のATM、鉄道の自動改札、クルマのブレーキやハンドルで問題がおきるはずはありません。現象が広範にあらわれるトラブルは報道ネタになりますが、事態が深刻でも隠せるものは報道できていませんから、まだまだあるでしょう、なんたって手仕事ですから(大丈夫かな原子力発電所や自衛隊の玩具)。 プログラムという作業は手作業です。前近代的なマニュファクチュア状態。こんな状態は零細のわが社だけ? いやいや、プログラムを自動化とか工業化したという話はききません。大手ソフト会社もたいして変わらないでしょう。グローバル経済という舞台の黒子であるプログラマは人海戦術の世界なのです。そうグローバル経済がもっとも忌み嫌う人件費の塊なんでよ。ですから安い人件費を求めています。派遣労働の口火もプログラマでしたよね。 「パソコンがおかしいのですが…」と異常事態を訴えるお客様からの電話。どんな状況かをうかがうのですが、ここが大変。結論から言えば想定外の事象がおきたからなのですが、どんな想定外がおきているのか? 電話では先様のパソコンの画面や印刷したものが見えません。あれやこれやとやりとりします。が、先様の業務の日常語をこちらは理解していませんから、何度も聞きなおし。こちらの質問も、先様はコンピュータ用語に詳しくないですから、何に例えてしゃべるか四苦八苦。ご近所なら「今からうかがいます」ということになりますが、ちょいと遠方ではなかなか。急ぎならば、なんとか電話でとりあえずの処置をしていただかなければなりません。 さて、異常事態の状態です。パソコンが凍った場合はキーボードもマウスもうけつけません。パソコンから何らかのメッセージが出ることもあります。このメッセージが英語だと、私の場合は辟易します。よしんば日本語だとしても、言語明瞭・意味不明。そのうえ妙に擬人化していて「オレ(ウィンドウズ)様は悪くない。オマエ(使っている人=お客)が悪いのだ」と聞こえるようなメッセージ。想定外の事象に出くわしても契約外だから知らん顔するという、グローバル・スタンダードの責任逃れの言いまわしなんでしょうか。こんな言いまわしは、伝統ある百貨店や銀行ではしないと思います(伝統的なお役所仕事を除く)。 ともあれ「どの画面でどんな操作をしたらそうなったのか」がつかめれば手掛かりになるのですが、おおむね「気付いたらこうなっていた」というのが現実ですね。分かっていて想定外の事象を招くなんて、できるもんじゃありません。 それでも、ようやくどの画面でどう操作したのかがみえてきました。それから原因究明へすすみます。ひとつひとつの現象から問題点をさぐるのです。ここでも「つもり」や「はず」は通用しません。現象を証拠とすれば、事件の捜査や事実を争う裁判のよう。裁判員ってのはこんな気分なのでしょうかね。そして明らかになった想定外の事実とは… 誤ったデータの入力、プリンタや機器の故障、ハードディスクの不調、パソコン本体の故障、ネットワークの不調、ウィンドウズの自滅、当社のプログラムのミス…などなど なんであれ、プログラムを作るときも、トラブルを調査するときも、予断と偏見は禁物なのです。でないと、冤罪を作り出したうえに、捜査・裁判に誤りはなかったと開き直るのと同じになってしまいます。どんな仕事でも同じだ? そうですよねぇ、もっと修行せにゃ…
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