パワハラ



 取引の約束が成立すると、それぞれ双方に「債務」と「債権」が発生するのだと、民法にあります。品物を売るほうは、相手に品物を引き渡すという債務と相手から代金を受取るという債権。買うほうは、代金を支払うという債務と品物を受取るという債権ってわけですね。双方とも債権・債務は互角なのです。お店で買い物するときは現物を現金で取引するので債務・債権などということは意識しませんが、掛けになると意識します。売ったほうは、品物を引き渡す債務をはたしたものの、代金を受取る債権は後日に先延ばし、買うほうは品物は受取る債権は享受したものの、代金を支払う債務が残ります。

 会社を運営するにも、個人で事業するにも、債権と債務の記録である帳簿をつけなければ立ち至りません。わが国では税務署の永年のご指導で、どの企業でも帳簿は同じようなもの(画一的)になります。そこで帳簿のソフト(財務会計ソフト)が定番と称して種々売られているのです。ソフト会社系のKやOやY、会計会社系のMとかJとかT、ハード・メーカー系のNやS・・・ 当社はというと社員の自作です。

 帳簿つけから税務報告までは画一になるのですが、そこに至るまではの債権・債務の発生と消滅の様子は各社各様です。現金売りもあれば掛売りもあるし、商売や事業ごとに千差万別、もう百花繚乱です。

 掛売りでは、売るほうは品物を納めて請求書を出し、入金は後日ということになります。これをコンピュータで管理しようってのが「販売管理」ソフトです。が、帳簿ソフトのように定番ってなものがありません。当社社員自作の帳簿ソフトをおわけすることはできても、当社用の販売管理は他所様では役に立たないでしょう。

 千差万別とはいえ、お見積をして受注、納品して請求する、ここまではこちら側のペースです。あとは入金待ち。ですが、ここからは先様のペースです。

 分割で支払われたり、他の契約と合算されたり。現金でのお支払や金融機関への振込み、小切手なら幸い、約束手形ってものもあります。金額の間違えで入金が少なかったり、多かったり。こちら側がどう言おうが、先様の都合次第です。債権・債務は互角と法が言っていても、どうしてもお金をいただくほうの腰が引けますね。お金もほしいのですが、次の「お仕事」がもっとほしい。

 販売管理は「先様ペースの入金をどう記録していくか」がポイントですね。一件一件が違う処理になるのはコンピュータとしては、大いに苦手なところ。本音を言うと、場合分けが多いですから、プログラムが煩雑で難しくなり、面倒くさい。そのうえ「無い袖は振れねぇ」なんて想定外のこともおこるかも。ま、そこを何とかするのがプログラマの腕の見せ所なんでしょうけど。

 まだ、パソコンが登場する前、ん百万円もするオフコンで請求データを作成するソフトを担当したことがあります。大手食品スーパーに納めている食品加工会社さんでした。データをフロッピーに収めてスーパーさんに請求するというものです。はじめて手がけた販売管理です。この時代に「請求を電子データ化するなんて、ずいぶん進んだ会社だな」と感心したいところだったのですが、請求先のスーパーの電子化(という合理化)で、せざるを得なかったのが実態でした。とんだ設備投資だったと思います。オフコンはそのスーパーへの請求専用です。これはもう業者間のパワハラでは? 力ある大手スーパー側はコンピュータ化で合理化・経費節減をめざし、その皺寄せを腰が引けているお金をいただくほうの納入業者が・・・

 今もさして変わらないようで、大手の業者さんとはいえ、グローバル何とやらで競争が激しいですから、コンピュータで合理化・経費節減に邁進しています。当然、大量のデータを力ずくで処理するために、データを画一にします。そのため専用の請求書しか使えないようにプログラムします。開発費もお安く済みます。腰を引いてお取引させていただいている側も、大手一社さんとだけお取引しているわけではありません。ですから、大手A社さんへはA社さん指定どおりに、大手B社さんにはB社さん用にと、いろいろプログラムを用意しなければなりません。

 『見積から受注、そして請求。ここまではこちら側のペース』だったはずなのですが、どうも皺寄せの関係で画一にはできません。一件一件が違う処理になるのはコンピュータとしては、大いに苦手なところ。本音を言うと、場合分けが多いですから、プログラムが煩雑で難しくなり、・・・・ あれ、入金の処理と同じですよ。ここも腕の見せ所ですかね。



オフコン
巨大な装置であった事務用コンピュータを小型化したもの。『装置』の小型化である。
ちなみにパソコンは『道具』の高性能化。

パワハラ
パワー(power:権力)・ハラスメント(harassment:いやがらせ・いじめ)の略。

米国で話題になり、わが国では89年の流行語大賞になったセクシャル・ハラスメント(性的嫌がらせ)という言葉を真似た和製英語。軽く言えば「力関係の悪用」、重くは「権力濫用」。

上司と社員と非正規雇用社員との職場内の力関係、金融機関と企業の力関係、この間のYダ電器の取引企業間の力関係、高級役人と個人タクシーの力関係・・・

似たもの
 ドクハラ(ドクター 〜:医者の患者いじめ)
 スモハラ(スモーク 〜:喫煙迷惑)
 アルハラ(アルコール 〜:酩酊迷惑)
 モラハラ(モラル 〜:精神的暴力)
 アカハラ(アカデミック 〜:学校の先生のご乱心)
 エイハラ(エージング 〜:年長者へのいやみ)
 シルハラ(シルバー 〜:高齢者虐待)
 テクハラ(テクニカル 〜:機械オンチいじめ)

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