同姓同名 同一人物を探すのをデータの「名寄せ」と言っています。この言葉をはじめて聞いたのはコンピュータの仕事に就いてからなので、業界用語でしょうか。当時、数千万件の契約を管理するシステムで、重複契約が無いかチェックする仕事でした。さすがコンピュータ、きっちり集めてきます。さらに、生年月日と性別でチェック、そのうえで住所で確認します。ほぼ重複契約を炙り出したリストができました。 言うまでもありませんが、入力ミスがあったら名寄せになりません。ですから、申込書の入力は慎重でした。二度入力して同じであるかチェックしたり、二人が別々に入力して一致したらOKとか。手間隙をかけていました。 ところで、契約を重複させるために意図的に入力ミスをしたら、どうなるでしょう? 生年月日や性別を変えたら契約が無効になります。住所も同様。ではどこを変えるか、名前です。別人になりすますのではありません。姓と名との間の空白です。一つめは「ヤマシタ■シゲル」、もう一つは「ヤマシタ■■シゲル」(■は空白)と。するとプログラムは同姓同名では無いと判断しますから、名寄せのチェックから逃れることができます。契約書や郵送の宛先に印刷すると、見た目ちょっと姓と名の間があいてるだけで、書類としてはなんら問題もありません。完璧な二重契約の完成です。 そこで、姓と名の間の空白を1つにするプログラムをかましてから名寄せしようと提案しましたが、どういうわけか却下されました。入力チェックの手間隙に比べれば造作も無いプログラムの追加なのですが、ダメでした。却下した上司やその上のほうに何か意図があったのでしょうかね? そんなわけで自分のパソコンに名簿ソフトを作ったときは、入力した姓と名との間の空白を一つにするようプログラムしました。当時は表計算ソフトを使っていましたが、このプログラムは今のデータベース・ソフトになっても使っています。当社の標準関数のひとつなのです。 二重申込みを炙り出せというミッションもやりました。数万件の申込書に申込者と関係者が記入されています。申込者と関係者を入れ替えた申込みも二重契約とみなすので、双方を入力してチェックしました。最終的には炙り出したリストを納入し先様がそれを見て原票にあたり、二重契約か否かを判定するという段取りでした。 このときは、姓名はカナ、住所は都道府県・市区町村どまり、性別なしです。かなり二重申込みかと疑われるものを炙り出しました。プログラムはほぼ完璧と自負したいのですが、炙り出されなかったのもあったのです。というのも申込書に手書きされたカナは判別が難しいのです。たとえばシとツとミ、ヤとカ、コとユ、ソとンとリ・・・。それで、入力があやふやになってしまったのです。1文字でも違って入力したら同姓同名は判断できませんから(もちろん姓と名の間は空白ひとつにしても)。 あるお店では、サービス・カードをお持ちになったお客様を名簿ソフトに登録して、販売案内を送付しています。が、同一人が何重にも登録されてしまいました。パソコンに登録するさい、同一人がすでに登録されていないかのチェックをせずにどんどん入力したためです。本来業務の片手間に店員さんが交代で登録していたので、面倒なチェックなどするより、同じ面倒でも手を動かすほうが楽だったのでしょう。そうであれば、あえてチェックせず、販売案内を送付する前に名寄せをするのもいい方法かもしれません。 当社で使っている名簿ソフトはいろいろ工夫してきました。個人の所属する会社は複数記録でき(肩書きの多い人もいる)、その会社には誰がいるかもわかるようにしてあります。印刷は宛名シール・はがき・封筒、メールアドレスも出力します。最初の表計算から何代目になるでしょう。ソフトを作り変えるたびにデータは引き継いできました。調べてみると約○○○○件。そのうち同姓同名は○件。そろそろ年末だから名寄せしてみようっと。 あ、そうそう、私の年金記録は大丈夫でしょうかねぇ? 何回か転職しているし、引越しもしてるし。コンピュータのデータだけじゃ名寄せできないんじゃない? 原票を捨てたんでしょ? こちらも給与明細を保管してないけど・・・ なんといっても私ゃ同姓同名が多いんだよ〜!
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