置いてけ堀 とはいえ、どのくらい前のバージョンの文書が読めるでしょうかね。昔に作った文書を読もうとしたら読めない! てなことは起きているかもしれません。そうなると解読不明の古文書ということに・・・ そうそう、かつて一世を風靡したワープロ専用機はすでに製造中止になっています。ですからもうフロッピーに保管した文書は古文書です。パソコンでは読めないですし、残っている機械が壊れたらもうアウト。 下町のとある親父さんがご自身のお店で使うソフトを独学で作りました。ウィンドウズが登場するずっと前のことですから、先進的な方ですね。10年ほどしてパソコンが調子悪くなってきたので、買い換えようとなさったのですが、そのソフトが動くパソコンは売っていませんでした。時代はウィンドウズ、彼のソフトは置いてけ堀を食ったわけです。それでも一念発起して、当社に何度も通い、年齢なんか何処へやら。ついにウィンドウズで動くソフトを完成させ、「冥土への土産だ」と仰っていましたが、あれから10年くらいなります。たぶんそのソフトは動いているはずです。 また、あるお客様用にマイクロソフトのアクセスというアプリケーションを使って業務用のソフトを作りました。アクセスのバージョンが2.0、ウィンドウズは3.1でした。アクセスもウィンドウズも新しいバージョンが売り出されても目もくれず、新たな業務ソフトを次々と製作していました。ところが、パソコンを買い換えるたびにウィンドウズは新しくなっていきます。古いウィンドウズの新しいパソコンは売ってくれませんから。でも新しいウィンドウズでも古いアクセスは動くはず、それがアップ・バージョンというもの、と思い込んでいたのです。が、ウィンドウズのバージョンがXP≠ノなったら古いアクセスは動かなくなりました。したがって業務用のソフトは全部動きません。とんだ置いてけ堀を食いました。 新しいウィンドウズやソフトを売り出すときは、『すっごく便利になります』とお調子のいい宣伝をしますが、置いてけ堀を食わすことにはトンと触れません。え? それがコマーシャル・メッセージというものですか。三百代言の嘘八百・・・。 秋葉原にNEC社製のPC98というパソコンを扱っているお店があります。もうNEC社では生産していません。これも一世を風靡したパソコン、自作のソフトがたくさん作られ、使用されていたのです。私も使っていました。そのお店に並ぶのは中古品ですが、まだまだ需要があるとのこと。置いてけ堀を食ったって自作ソフトを使かい続けるほうが、直すよりもいろいろ良いのでしょう。公官庁からの需要もあるとか。 パソコンのバージョンアップで困る話はたくさんあるでしょうねぇ。たとえば障害者のためにボランティアで作られたソフトが、パソコンのバージョンアップで動かなくなるなんて、いやな話ですね。 置いてけ堀はソフトだけではありません。昨今売り出されたウィンドウズのVISTA。周辺装置とのある接続方式(SCSI)に置いてけ堀を食わせました。この接続方式用の記憶装置(HD、MO、ZIP、DAT…)や入力装置(スキャナ…)は使い物にならなくなります。そんなこと、宣伝していませんでしたよ。わが社でもけっこう使っているのに・・・。 てなわけで、VISTAは使っていません。実験用に購入するか思案中。お客様から新しいパソコンの手配を依頼されても、前のバージョンのXPを用意します。秋葉原を歩いてごらんなさい、「XPモデルあります」の看板や垂れ幕、旗、幟があふれています。そろそろ、消費者がメーカーに置いてけ堀を食わせても良いのでは? いつぞや地元の親父さんたちとの集りの帰り、夜更けの錦糸町、ご婦人が私を引っ張るのです。「店で飲んでいけ」というお誘いですが、色っぽさにめげずお断り。だってここは、江戸は本所七不思議の『置いてけ堀』があったところでしょう、どこからともなく「置いてけ、置いてけ」という声がして、釣った魚が無くなるという言い伝えの。酔いが覚めたら懐が空っぽ、てな目にあいたくないもん。
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