発熱



 頑張ってきたパソコン1台がついにダウン。ウィンドウズ98にオフィス97という組み合わせ。もう、10年くらい使ってきましたかね。当時は速いと自慢のマシンが、まわりがどんどん速くなるので、ノロマになったような感じでした。ソフトの設計でも間(ま)が肝心で、画面のボタンをクリックして次の画面を出すまでの間が悪いと、精神的な緊張(ストレス)をもたらし、ひいては誤操作の遠因になりかねません。間をうまくつなぐのも工夫のひとつ。ですから、あえて遅い(速くない)マシンで製作するのも技(わざ)ってなもんですな。

 とはいえ、新しいパソコンを社員が秋葉原まで出かけて調達してきました。いつも協力していただいている会社の役員さん(☆)が一緒にまわってくださいました。CPUやマザー・ボードをはじめ、部品を買い集めて、会社で組立てるのです。

 ケース(ボディ)はタワー型、縦45×横20×奥行45p程度なのですが、びっくりしたことに横っ腹にとても大きな穴があるのです。直径は20p、ボディの中が丸見え。そこに換気扇(ファン)がついているのです。平屋の家でいえば、玄関よりおおきな換気扇が壁をぶち抜いているようなもの。当社のパソコンにはどれも直径8pの換気扇はついてます。このマシンはそれも付いていて、別途に玄関大の換気扇。あきれました・・・。

 部品の電子回路は、珪素(シリコン)で作られています。シリコンはがっちり結晶する性質があります。ガラス、大理石、陶磁器の釉はシリコンの化合物(二酸化珪素)です。どれも電気を通しません。純粋なシリコンの結晶も通しません。がアルミとかリンを少し混ぜて結晶させると電気が通るのです。アルミを混ぜたのとリンを混ぜたのを組合わせると電気は一方通行になります。だから半導体。これらをうまく組合わせて演算や記憶の電気回路に仕立てます。これに小刻みに電気を流して計算をし記憶させるという仕掛けがコンピュータ。

 さらに、この回路を小さなシリコンの板にぎゅうぎゅうに埋め込んだのがIC(集積回路)チップ。1p四方に百万回路以上を埋め込んでいます。パソコンにはいくつものICチップが入っていて、中心になっているのがCPUというICチップです。

 電灯やモーターへの電流はエネルギーを運ぶのが目的ですが、回路に流す電流は信号を伝えるだけなので微弱です。とはいえ、ぎゅうぎゅうに詰め込まれた狭いチップの中、どうしても発熱します。また、電流は小刻みに流します。ひと刻みでひと計算(処理)する仕組みで、刻みの間隔が短いほど計算が速くなります。ですから、性能がよければよいほど熱くなるということです。うっかり触れば火傷。そういうわけでCPUには専用のフィン(放熱ヒレ)とファン(扇風機)がついているマシンがほとんどです。

 そもそも電気が通りにくい物質(半導体)に電気を通すのだから発熱してあたりまえですね。電熱器のニクロム線と似ていますね、電気の流れに抵抗した分、熱になるのですから。逆に発電所から都会へ電気を送る送電線はとてもよく電気を通す物質(導体)の「銅」なのですが、それでも発熱します。東京電力の場合、営業区域外の新潟と福島にある原子力発電所から東京までの送電線で、電気の半分近くが熱になって失われているとのことです(※)。

 ブック型のパソコンを分解して部品の入替えをしたとき、とりあえずカバーをはずしたままテストすることにしました。ところがこのパソコンのCPUにファンがついていません。ボディの換気扇の風がCPUに当たるようにとプラ・フィルムの衝立がついているだけ。CPUが発熱しすぎすると暴走(でたらめな計算を)しますから、一人が懸命に団扇で風を送りました。小型化と低価格化を目指した安物づくりじゃないでしょうね、謀有名メーカーさん。

 この手のパソコンは空調がとてもよく効いたオフィスように作られているのでしょう。熱気の満ちた厨房の隣の事務スペースに設置したいお客様用に放熱効果のよさそうなパソコンを探し、日当たりの良すぎるプレハブで使うお客様用には余分にファンを2台つけました。

 かつて大型計算機の計算機室はばっちり空調が効いていました。といってもマシンを冷やすための空調だから寒い! 一年中衣更着です。人間なんて眼中に無い。空調が効いていないと暴走しかねないパソコンはこの伝統なのでしょう。

 え、話し戻せ? 大きな換気扇がいるほど高性能なマシンを買ったのかって? いえいえ、当社の事務所、天井がとても高いんです。元倉庫、4m以上あります。夏でも事務所を抜けていく風が涼しいので、冷房を入れないんですよ。環境には優しいんですが、冷房なしでマシンがヘソを曲げないかと・・・。



☆(株)彩ネットワークス
※そもそも原子力発電は燃やしたウランのエネルギーの数%しか電気にできていません。残りは熱となって海水を温めています。二酸化炭素(CO2)を出さないから環境にやさしい? 温室効果うんぬんより、地球を直接温めている放熱量のほうが環境にきついのでは? そのうえウランの燃えカスは放射能が漏れないよう隔離して、熱をじくじく出すけど使えない・・・ 環境の劇薬・・・・。

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