インパクト



 ギギギ・・と音を発しながらプリンタのヘッドが左から右へ動いていきます。その跡に漢字の上半分だけが見えます。ガクッと紙が迫り上がり、ヘッドはスーッと左に戻り、ふたたびギギギ・・と左から右へ、ガクッと紙が迫り上がると、出た漢字だ!

 初めてプリンタが漢字を印刷した瞬間、感激しましたねぇ。それまでは、活字で印刷していました。プリンタというよりコンピュータで制御するタイプライタですね。活字を後ろから引っ叩いて印字していました。活字もアルファベットと数字とカナの200字程度で、漢字なんぞありません。

 活字の代わりに細い針で点を細かく叩けば、どんな字も印刷できると登場したのがドット・インパクト・プリンタ。電光掲示板と同じ理屈。でも最初は上述のように上下半分ずつ印刷してました。すぐに上下半分は解消し、16×16の点で1文字が32×32の点と細かく綺麗になりました。

 針を引っ叩くのを、インクを吹き付けるのにしたのがインク・ジェット・プリンタ。音がしないのでびっくりしたのを憶えています。

 そして、レーザー・プリンタが登場。針よりもずっと細かい粉(トナー)を紙に圧着するので、綺麗な印刷になります。すでにコピー機がモーレツからビューティフルに出まわっていましたので、技術より価格の問題だったのでしょう。印刷の概念も文字から画像を印刷するに切り替りました。

 町の文房具屋さんで売っている請求書や領収証の用紙は2枚一組の複写式になっていて、1枚目に書いた字が2枚目にも写ります。1回で2枚書けるわけです。その用紙を使った請求書ソフトを作るよう依頼がありました。ところがプリンタはレーザーです。複写式の用紙が使えません。というのは、1枚目には印刷しますが、レーザー・プリンタには筆圧がありませんから、2枚目に写りません。逆にレーザー・プリンタですから、罫線や小さな字も綺麗に出せ、文房具屋さんの請求書用紙に負けないものが印刷できます。ですから、白紙に用紙ごと2枚印刷するようにしました(2枚目には『控え』の文字も入れて)。

 請求書や領収証は書いたその場で引き離して、1枚を先方に、控えを手元に残せばすみますが、宅配便の伝票は5枚複写です。1枚目は依頼主控え、2枚目は売上票、3枚目は貼付票、4枚目届先控え、5枚目配達票、集荷や配達の作業ごとに1枚ずつ引き離して使います。5枚重なっていることに意味があるのですね。ここはドット・インパクト・プリンタの出番。どんなに音が五月蝿くても、引っ叩く機能がなければならないのです。インパクト・プリンタがボールペンなら、レーザー・プリンタは毛筆ですな。

 学生のころ、講義の代返を頼むとともに、真っ黒なカーボン紙とレポート用紙を渡していた兵(つわもの)がいました。頼まれたほうはレポート用紙にカーボン紙を挟み、授業のノートをとると同時に2枚できるわけ。1枚は頼んだ兵が手に入れます。今ならコンビニのコピーで済ましちゃうのでしょうね。今の複写用紙はカーボン紙を挟まなくても複写できる感圧紙(ノーカーボン紙)ですね。

 話が変わってEメール。送信するほうのアドレスが“FROM”、宛先が“TO”です。同じ文面を複数の相手に送りたいとき、があります。いわゆる同報メール。この場合は宛先“CC”にメール・アドレスを並べます。

 ここで注意することは、メール本文とともに、宛先CCに並べたメール・アドレスも宛先の全員に届きます。受取り側の全員が顔見知りなら問題は無いでしょうが、そうでないなら、赤の他人のメール・アドレスを告知してしまうことになります。注意しましょう。このような場合は宛先“BCC”にメール・アドレスを並べましょう。並べた全員にメール本文は届きますが、その人以外のメール・アドレスは届きません。

 先日、知人から届いたメールにぜんぜん知らない人のメール・アドレスが混じっていたので、メール本文をコピーしてメールは削除しました。個人情報保護などと騒がれていますから、仕事がら用心に越したことはありません。

 ところで、
CCはカーボン・コピー(carbon copy)の頭文字。カーボン紙を挟んで複写するというイメージですね。
BCCはブラインド・カーボン・コピー(blind carbon copy)。

 ノーカーボンの時代にカーボン・コピーとは古い表現を使うもんですねえ、新しいシステムなのに。え? 靴しか仕舞っていないのに「下駄箱」って言っているって? そうでしたね。



下駄箱ってなら
「筆箱」もだよ
CDとDVDしかなくても
「レコード屋」って呼んでるね!
「電卓」って電子式卓上計算機の略(広辞苑)
卓上っていうくらい昔は大きかったらしい・・・

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