らん、ラン、LAN・・・



 先日、東京が大停電になりました。川を航行していたクレーン船が送電線を引っ掛けて切ったのが原因と聞いたとき、そんなはずはない、送電線はバイパスの経路があって、一箇所が切れても停電はないと信じていました。そしたら、バイパスの送電線も同じ鉄塔で川を渡していて、それも切ったとのこと。これじゃバイパスになりません。パソコンで言えば同じディスクにバックアップのコピーを取っているようなもの、ディスクが故障したらもうお手上げです。停電の責任は同じ鉄塔にバックアップしていた電力会社にもありますね。

 停電の所為で命を預かる病院などでのトラブルのニュースは聞きませんでしたが、証券取引所のシステム・ダウンはニュースになりました。停電用のバックアップ電源装置が故障していたとか。ここのシステムはよくトラブルおこしてますねぇ。リニューアルした日に動かないとか、誤発注を取り消せないとか。世界の経済を左右するシステムを製作しているのは最高レベルの技量をもった「プロジェクト]」のような技術者達ですよね?

 社員が聞きつけたニュース。上司の命令でパソコンで資料を作成していた社員、徹夜の残業で完成したとたんに停電。作った資料はすべて消えてしまったとか・・・。笑うに笑えません。電子レンジを使うとブレーカーが落ちて室内が停電、前の事務所では何度泣いたことか。そうそう、本の原稿を書いているときにウィンドウズがフリーズ、それまで書いた数十頁が消えて泣いたことも。

 停電やフリーズでデータが消えてしまうのは、ディスクに保存していないからです。「ワード」などワープロ・ソフトは、パソコンのメモリという部品に文書を記憶していて、保存の指示をするとディスクに書き移します(「エクセル」など表計算も同じ)。学校ではメモリを揮発性、ディスクを不揮発性の記憶装置と教えました。電気の力で記憶しているメモリは電気が切れればすべて忘れるので揮発性、磁石で記録しているディスクは忘れないので不揮発性。

 データを直ちにディスクに保存するソフトもあります。停電しても、フリーズしても、それまで入力して登録したデータは消えません。データベース・ソフトがそのひとつです。これはデータを他者と共用するのが目的だからです。JISもそう規定しています。当社で作るソフトの多くはマイクロソフト社の「アクセス」というデータベースを使用しています。
 共用となると、LANでつないだ他のパソコンの共有になっているアクセスのデータベースを何人かで一緒に使用できます。ある人が登録したデータは他者が直ちに参照します。ですから頻繁にディスクを読んだり書いたりしてます。そのため、ディスクに高速性が要ります。速くて容量が大きいのはハード・ディスクです。アクセスのデータベースが自分のパソコンのハード・ディスクにあるのが最高速。

 LANでつないだ他のパソコンからの使用は、ネットワークの処理があるのでその分遅くなります。他者との接続と監視をするネットワークの処理は、ウィンドウズの種類や設定によってずいぶん違います。

 かつてあるお客様のサーバー用のウィンドウズに入れたアクセスのデータベースは、一人しか使用していないときはとても快適でしたが、二人、三人と他のパソコンで共用が始まると、どんどん遅くなって、とても使い物になりませんでした(ほかのお客様のサーバーでは問題はありません)。

 昨今、LANに接続するハード・ディスクという機器が登場しました。ハード・ディスクといっても独立した機器ですから、一種のパソコンです。キーボードやマウスは付いていませんが、ウィンドウズにあたるオペレーティング・システム(OS)はあります。このOSがネットワークの処理をしています。OSは機器のメーカーが独自に開発したものか、リナックスやトロンを利用しているのでしょう。ウィンドウズかもしれません。当然、共有の機能はあります(無けりゃネットワークにつないでもハード・ディスクを誰も使えない)。しかし、OSの仕様や設定によってはアクセスのデータベースを共用すると遅くなるかもしれません。そもそも、頻繁な読み書きとなる共用にはむいていないかもしれません。となると、共用は避けたほうが無難かも・・・
 なお、共用機能が無く誰かが使っていると他の人は使えないワープロや表計算ソフトは大丈夫です。

 『共用を避ける』とは想定外でした。ウィンドウズのサーバーの時は設置した業者さんがサーバーの設定を変更することができず、別のパソコンにデータベースを移して凌ぎました。別のパソコンが無けりゃプログラムの改造です。アクセスの共用を利用してこそ安価にプログラム開発ができたのですが・・・



※データベース
「複数の独立した利用者に対して、要求に応じてデータを受け入れ、格納し、供給するためのデータ構造」 JIS情報処理用語 X0004.07.15 1996
※共用 複数の独立した利用者が時を同じくして使用する。共有だけでは同時に使用できるかは別。
※LAN
ローカル・エリア・ネットワーク オフィスなど狭い範囲でのパソコンでデータ通信。いうなれば内線電話のパソコン版。
※ネットワーク
 の処理
LANのケーブルに流れてきた信号がそのパソコンへの信号か判別して、そうなら信号を受取って内容を検討、権限などをチェック。受付けるならその処理をするプログラムを動かして結果を出し、それをLANケーブルに何も流れていない時を待ってから流す…と、とっても大雑把に言ってもけっこう大変な処理。
※リナックス
フィンランドの学生さんが開発し、公開したOS。第42報「きつい処分」に。
※トロン
80年代に日本の東大の先生が提唱・公開したOS。携帯電話や自動車などで活躍中。アメリカの横槍が無ければ、現在日本のパソコンはすべてトロンだったかも。
※ウィンドウズ
アメリカの独占OS。非公開。

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