ドラえもん



 コンピュータ【computer】とは計算する【compute】もの=@表計算ソフト(*1)のように計算が目的のソフトを使うと計算機っぽいですが、ワープロ(*2)やメールばかりか、買い物をしたり、映画を見たり、音楽を聞いたり、と、近頃のパソコンはとても計算機とは感じられません。数値化したデータの計算を繰り返して結果を出す仕組みですから、写真もパソコンにしてみりゃ、立派な計算結果なのです。

 一に計算、二は記憶、三が通信、というのがコンピュータの機能で、これらが一体となっていますから、単に計算のための道具ではなくなっているのです(*3)。しかも計算手順(プログラム)を記憶させられますから、あとはプログラムしだいで、いかようなことでも計算でやってのけます。便利な道具になりました。漫画ドラえもんのポケットから出てくる道具のようですね。

 10年ほど前のこと、会計関係のソフトの打合せをしていたところ、「領収証を発行したら、そのまま仕訳して帳簿に載せてしまおう」という提案がありました。やってやれなくないプログラムですので、どう作ろうか思案を始めたとたん、会計士さんからサジェスチョン、「だめ、誰がどこでチェックするんだ」。発生から記帳に至るまで、何人ものチェックが入り(しかも違う角度から)、さらに試算表などでチェックが入るのが会計のいいところ、間違いを防ぐように築き上げてきた長い会計の歴史だということです。打合せの結果、チェックのための帳票を印刷したり、人間のチェックがすまないと次に進まないようにすることになりました。

 確かに何度も転記するよりはボタンひとつですむほうが便利でしょう。効率的にも見えます。でもそれではチェックの手抜きになってしまうのですね。機械にできることだけを機械にやらせ、あとは人間がやるべきなのでしょう。データの計算・蓄積・集計などの処理をして人間が判断するための材料を作るのが機械、その材料で判断をするのが人間なのですね。その分の人間の手間と時間は省略できません。
 会計の歴史に学びました。コンピュータは道具なのですね。

 そうそう、チェックと言えば、そんな会社がありましたね、偽装データが見抜けなかった審査が仕事の会社。そこのお偉いさんは会見で「偽装があると思っていなかった」「コンピュータで作成したのだから、適正と思った」と釈明していました。偽装だろうが、勘違いだろうが、操作ミスだろうが、間違いはある。それを審査するのが仕事でしょう? なに考えてるんでしょうか? このお偉いさん。

 ニュース番組に登場した専門家は審査する書類≠見ればすぐ偽装だわかると指摘していました。コンピュータがどうのこうのではないのです。当の偽装した本人が国会で「審査すれば、すぐばれると思ったのに、通ってしまった。あの会社はほとんど見てない。だから利用した」と看破していましたね。手抜きしたんでしょ、手抜き。コンピュータの所為にしないでください。

 さらにお偉いさん「大臣認定プログラムを改竄していたのだから、見抜けないのも仕方がない。改竄できないようにして欲しい」と官≠恨んだ被害者面していましたね。それならいっそ会社独自のチェック・プログラムをお作りなったらいかがでしょう。官ではできないような超%K正な審査をして、他社との差別化をはかるのです。それが官に対する民の企業が生きる道じゃないですか! 審査時間の短さとお値段だけでは差別化になりません。質ですよね、仕事の質。

 会見では「審査の再計算はコンピュータでも大変な作業になる」と泣き言も出ましたが、それを言っちゃおしまい。頑張って審査しましょう。

 老婆心ながら、独自プログラムを開発するにあたっては、審査の効率をあげるとか、便利だとか称した手抜きプログラムにならないようにね。人間がすべきチェック・ポイントをお忘れなく。

 自動車も金属バットも道具です。でも、使いようによっちゃ凶器にもなります。コンピュータも道具。どんな便利な道具でもきちんとプログラムして使わないと・・・。ねえ、ドラえもん。



※1表計算ソフト  有名なのはマイクロソフト社の「エクセル」。ロータス社の「ワンツースリー」は今いずこ…

※2ワープロソフト ウィンドウズのアクセサリーに「ワードパット」というソフトが付いてます。別売りではジャストシステム社の「一太郎」、マイクロソフト社の「ワード」が有名。

※3 第21報『デジタルは及ばざるがごとし』 第32報『力ずく』 第39報『我慢のモザイク』などなどをご参照ください。


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