ミソくそ



 世界で最初のコンピュータ「エニアック」(*1)が誕生したのは50年以上前。プログムとデータは別々の装置に記憶していました。CPUは、プログラムのコードを読み込むときはこっちの記憶装置から、計算対象のデータを読み込むのはあっちの記憶装置から、という仕組みでした。今日のパソコンは同じ記憶装置の中にまぜこぜで記憶しています。CPUがプログラムのコードとして読み込んだらプログラム、データとして読み込んだらデータ、という仕組みになっています。プログラムもデータも記憶しているのは同じ二進数の羅列。とはいえ性格が違うのだから別々の記憶装置でという発想から、同じ二進数なんだから同じ記憶装置で読み分けようというアイデアなのです。

 このアイデアは、エニアックが出来てからまもなくです。現在ではパソコンはおろか、炊飯器やエアコンのマイコンも、ゲーム機も、コンビニのレジもキャッシュ・ディスペンサーも、統合で揉める銀行の大型コンピュータも、宇宙船のコンピュータも、それから・・・ みんなこの方式です。

 発表したのはフォン・ノイマンさん(*2)。ですからノイマン式と言ってます。この人「二十世紀の百人」(朝日新聞)にも入ってます。さぞかし特許料でウハウハの人生だったと思いきや、『コンピュータの発展のために』と特許権を放棄しました。ですから今日のコンピュータの氾濫につながったのです。独占で儲けようとウィンドウズの中身を公開しない会社の大将は彼の爪の垢を飲みそこなったのでしょうね。

 さて、プログラムとデータをまぜこぜに記憶する装置は、パソコンではメモリーという部品です。メモリーはパソコンの電源を切るとすっかり記憶を失います。ですから、電源を切っても忘れない補助記憶装置に記憶を移して保存しておきます。そして必要なプログラムやデータを補助記憶装置からメモリーに取り出してきてから計算し、結果をメモリーから補助記憶装置へ保存します。なにせ大量に記憶させますから、補助記憶というより記録装置というべきでしょう。パソコンの場合はハード・ディスクです。フロッピーや流行のフラッシュ・メモリーもそうです。

 いくらノイマンさんの功績とはいえ、ハードディスクまで、まぜこぜに憶えこませる必要はありません。当社では1台のパソコンにハードディスクを2台つけて、1台にプログラムを、もう1台にデータを記録するようにしています。理由はウィンドウズが壊れたときの危機管理でした。

 ところが最近、パソコンそのものが故障することが多くなって来たようです。大量に出まわっているから、耳にする事例が多いのでしょうか。それともパソコンが安かろう悪かろうだから? いずれにしても、パソコンに記録したデータはパソコンが壊れると取り出せません。「何とかして!」というご依頼で、パソコンからハードディスクを外し、別のパソコンにつないでデータを取り出す、なんて作業をちょくちょくお請けします。

 当社の業務用ソフトを導入したお客様の声「パソコンの調子が良くない。たまに凍るんだ。業務のソフトだけにパソコンの調子次第で業務ができなくなるのが怖い」とのこと。「なら、外付けハードディスクを試してみましょう」ということになりました。外付けハードディスクとは、お弁当箱くらいの大きさで、中に記録用の円盤(ディスク)と駆動・制御装置が入っています。当社でも数年前から1台使っています。パソコンとはケーブルをつなぐだけでOKです(USB接続 *3)。パソコンが故障しても、別のパソコンにつなげば業務はできます。事務所が万一のときでも、外付けハードディスクだけでも持ち出せばなんとかなるでょう。

 「ハード・ディスクの余裕が無くなって、パソコンが動かなくなることがあるんだ」とある友人からの相談です。
「デジカメで撮った写真を保存しているからかな(*4)。息子も写真をたくさん保存しているんだ」 親子で同じパソコンを使っているんですね。「買い換えようかと思ってんいるんだ」
 そこで提案、「外付けハードディスクにしたら? 写真はそこに保存すれば、ハードディスクに余裕ができて、ウィンドウズもよく動くようになると思うよ。ついでにあなたと息子さんと1台ずつ買って、それぞれが写真を保存、整理したらどう?」

 パソコンは何でも記録できて便利ですが、その記録がパソコンのどこに紛れているのかわからない、という感覚が憑きまといます。ブラック・ボックスのような感覚ですね。「だから、嫌なんだ!」という別の友人もいますし、文書をフロッピーに記録して机の引出しの中にきれいに整理されているお客様もいらっしゃいます。

 データは自分のものです。外付けハードディスクに自分のデータを保存して自分の手元に置く、という感じですかね。プログラムとデータのミソくそ一緒を解消する一手段になるかもしれません。

 外付けハードディスクが壊れたら? 怖いですね〜。こればかりはバックアップをとっておくことをおすすめします。もちろんバックアップも手元に置けるように。



※1エニアック  電子式数値集積計算機とでも訳しましょうか。18000本もの真空管を組合せた代物。終戦の翌年(1946)完成。

※2フォン・ノイマン (1903-1957)米国のマンハッタン計画(原爆投下)に参加した学者。軍事機密であったエニアックの次の計算機開発チームにも加わり、そこでのアイデアを彼が公表した。

※3USB ユニバーサル(普遍的)シリアル(直列)バス(母線)。パソコン本体とプリンタ、マウスなどの装置を繋げる仕組みのひとつ。ハードディスクやスキャナなどいろいろな装置にも使える。なんとUSB接続の電灯や扇風機まで売っている。
バス:装置と装置をつなぐ機構(乗合バスのバスと同じ)。

※4写真というデータ データ量がとても大きい。21報「デジタルは及ばざるが如し」39報「我慢のモザイク」をご参照ください。


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