第35報
'04.3.18

ただの箱


 「ウィンドウズがなければ、パソコンはただの箱」とウィンドウズの社長サンがのたまわったら、「パソコンがなければ、ウィンドウズはただの紙」と日本のパソコンのメーカーの社長サンがやり返したとか。けっこう前の話ですが。ウィンドウズはソフトウェア、パソコンはハードウェア、この両者の対立は根深いものがありますが、使うわれわれの側からすれば、両者ともになければ使いものにならないのがコンピュータなのです。なお、ウィンドウズはソフトの中でもOS(基本ソフト)というもので、他のソフトをコントロールするものです。これがないとワードも一太郎もエクセルも当社のソフトも動きません。

 秋葉原の馴染みの店で馴染みの店員さんと最近のパソコン状況について談笑していた時のことです。ピチピチギャル系の女の子達が出し抜けに入ってきて、「マックありますぅ?」。「ないよ! うちはウィンドウズだよ」と店員さんは不機嫌そうにギャルを追い返しました(お引取り願っていました)。彼女たちはハンバーガー屋(マックとかマクドとか)と間違えたわけではありません、アップル社のマッキントッシュというパソコン(通称マック)を探しに来たのです。ご存知のようにマックのデザインは斬新・綺麗・可愛い。そろいもそろって不細工なウィンドウズ・パソコンに比べればとってもステキです、恰好は。そのうえOS(基本ソフト)もハードもメーカーは同じアップル社ですから、ウィンドウズと違ってメーカーの対立はありません。

 ハードはソフトが何であれ動きます。ソフトに記述した命令にしたがって動作する機械ですからソフトは何でもいいのです。それじゃあ、恰好の好いマックのハードにウィンドウズを入れて売り出したら? 実は動かないのです…。
 ソフトを実行するには、ソフトのプログラムの命令コードを順に取り出して解析・実行する部品(CPU)が必要です。CPUをコンピュータと呼ぶむきもありますが、携帯電話、エアコン、コピー機などなど用途に応じてたくさんの種類のCPUが出ています。パソコン用ばかりではないのです。
 さて、私がコンピュータの業界に入ったころ、CPUに直接命令するプログラムを作る仕事がありました。このようなプログラムはアセンブルと呼んでいます。当時、パソコン用のCPUはインテル社とモトローラ社のものがありました。それぞれ命令は250種類程度なのですが、コードが違います。ですからインテル用に記述したプログラムはモトローラでは動かないし、その逆でも動きません。つまりCPUを動かすにはそのCPUが理解できるコード(命令)で記述したプログラムでなければなりません(※1)。

 ウィンドウズはウインドウズ用のCPU、マックはマック用のCPUが入っています。CPUが違うのです。ですから可愛いマックにウィンドウズを入れても、命令体系が違いますから、まったく動きません。私に英語で命令するようなものです。何を言っているのかわかりません。「フリーズ(動くな)」が「プリーズ(どうぞ)」に聞こえて…。

 ウインドウズ・パソコン用のCPUはインテル社製です。というよりインテル社製CPUにあわせてウィンドウズを開発したのです。どっちにしろ、これを称してウィンテル連合と呼ばれています(※2)。

 「真っ黒な画面に『NO SYSTEM DISK』とメッセージが出て、パソコンが動かなんですが…」「フロッピーがささったままじゃありませんか?」「あ、ほんとだ」「フロッピーを抜いて再起動してください」「…あ、動きました」てなお問い合せが、ままあります。パソコンはフロッピー、CR−ROM、ハード・ディスクの順に起動するためのブート・プログラムというものを探しにいきます。通常ならばハード・ディスクを探してそのブート・プログラムが「ウィンドウズを動かせ」となっているので、よっこらさっとウィンドウズが立ち上がるのですが、ささっていたフロッピーにはそれがなかったので、『NO SYSTEM DISK』となったのです。(※3)
ウィンテル連合と呼ばれながらも、ハードはハードでウィンドウズにお構いなく自立しているのです。

 さて、このフロッピーにブート・プログラムと悪意のプログラム(ウィルス)が仕組まれていたら…。もちろんウィンドウズが動く前ですから、何らのチェックもありません。ハード・ディスクを消去することぐらい簡単です。ウィルス対策の本を読んでいたら、この手にも注意するようにと警告が載っていました。まさか職場の同僚が…、てなことがありそうな「お役所」という職場を心配してしまいます。

 「私のノートパソコンはフロッピーもCDもついてないから大丈夫」とある友人。「ふ〜ん、ウィンドウズなんかが壊れたときどうするの?」「え゛?」「フロッピー起動のメンテナンスができないよ」「そっか、そんときゃ、あきらめるしかないか…」




*1 アセンブルする命令コードはすべて2進数です。
*2 インテル社と同じ命令コード体系の別メーカーのCPUもあります。
*3 ブートプログラムを探す順番はパソコンの「BIOS」という設定で変更できます。




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