第34報
'04.1.7

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恋の病


 地元の異業種交流グループで「ネットワークの落とし穴」と題して勉強会をやりました。グループメンバーのもう一人と私が先生です。先生も生徒もみな地元の中小零細企業の親爺さん、でも真剣に勉強。コンピュータの原理から動作、通信の仕掛けなどなど、けっこう濃かったのです。その甲斐あってか、『なんだ、ウィルス、ウィルスったってただのプログラムなのか』との感想。ワープロ・ソフトもウィルスもプログラムとしちゃ同じ。そりゃ、私らそれで飯を食っている者からすると当たり前なのですが、知らない人がウィルスと言われりゃ正体不明の異物かと思うでしょうね。

 あるお客様のところで、新しいパソコンへの入れ替えをしました。そのお客さんはインターネットをガンガン利用しています。ネットワークを担当している業者の方といっしょの作業で、ウィルス・チェック・ソフトも設定しました。彼はついでに、LANを経由した遠隔操作(*1)で、ほかのパソコンもウィルス・チェック。すると、あるパソコンから出るわ出るわ、わんさかわんさかとウィルス発見!

 そのパソコンを使用している女性社員はもう真っ青になって「どうしましょう、どうしましょう」。彼は冷静に「チェック・ソフトのワクチン機能(*2)で駆除しましょう」。ところがそのパソコンにウィルス・チェックソフトがインストールできません。彼は最新のウィルス・チェック・ソフトを持っていたのですが、そのパソコンは古いウィンドウズだったのです。
 さて、困ったぞと思案していると、女性社員が
「このパソコンを使っていても、何も変なことは起きませんでしたよ。業務に支障はきたしてないし…」。
考え込んでいたネットワーク担当の彼は
「そうか、このパソコンはウィンドウズ95だから発病しないんだ!」
「????」
「最近のウィルスはウィンドウズXPとか新しいウィンドウズ用に作られているんですよ。」
「????????」
「新しいパソコンしか発病しないんですよ、古いウィンドウズでは発病、つまり動作できないんです。だからパソコンは支障なく使えたんです。」
「ふ〜ん」
「ま、『鯉ヘルペス(*3)』みたいなもんですよ、鯉しか発病しない。」
「納得!」
慌てることはなく、後日対処するということで、その場はひとまず落着。

 ウィルス対策として古いパソコンを使うほかに、メジャーじゃないメール・ソフトを使うのも手です。何となればウィルスを作って流行らせて悦ぶ輩がやっているわけですから、たくさん使われているメール・ソフトを標的にするのです。ウィンドウズには「エクスプレス」というメール・ソフトがただで付いていますね。誰もがそれを使う、だから標的にする。それもそのウィルスが発病すると勝手にどしどしメールを発信するというプログラムで、メールの宛先がウィンドウズの製造元となれば、当のマイクロソフト社も慌てますわな。やれ、セキュリティ・ホール(*4)がどうのこうのと難しく言いながら…。

 ウィルス付きのメールを携帯電話で受信したらどうなるでしょう? 発病しません。携帯電話はウィンドウズでもなければ、そのメール・ソフトはエクスプレスではありません。おそらくメーカー各社それぞれ独自開発したものでしょう。だからウィンドウズ用のウィルスは動きません。でも、そのメールをパソコンに転送したら、そのパソコンで発病するかもしれません。当社の社員から「携帯電話へのメールをパソコンで受信したらウィルス・チェックにひっかかった」と報告してきました。それ以外にパソコンでインターネットやっていないのに… とぼやきながら。発病しなくても、保菌者というか中間宿主というか、そういう役割を携帯電話が果たすこともありえましょう。携帯電話だけではありません、さっきの古いウィンドウズ・パソコンも、マッキントッシュ・パソコンなどでも同じことが言えるでしょう。

 漫画雑誌の川柳コーナー(*5)に
=さよならの メールにウィルス 添付して=
というのが賞賛されていました。別れた彼氏のパソコンのデータを破壊してしまう、何かありそうな話で、うまい! でもそれじゃ過激だから
=さよならの メールで形跡 消しましょう=
『別れた彼氏のパソコンに侵入して自分が出したメールだけを全部消してしまう』というソフトなら作っても売れるかしらん。それでもウィルスにはかわりないか。堂々と売るのは…無理だよねぇ…。



*1 共有の設定をすると、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)に接続している他のパソコンからファイルを読んだり書いたりできるので、他のパソコンからウィルスチェックをしてもらう。
*2 ウィルスプログラムを書き直して無害にするプログラム
*3 コイヘルペスウイルス病は、最近明らかになったウイルスによるコイ特有の病気です。コイ以外の魚は感染しません。また、このウイルスは活動可能な温度が限られており人に感染することはありません。
【水産庁のホームページから】
*4 ウィンドウズのプログラムの欠陥。本来ならあることが出来ないようにプログラムしたはずなのに出来てしまった、という不具合。あることとはネットワーク経由のアクセス。早い話がマイクロソフト社のミス。
*5 小学館「ビックコミック オリジナル」の「川柳 虎の皮」



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