2002.8.8

 

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ルームメイク


 少しばかり前のテレビニュースで「個人情報の漏洩(ろうえい)」を取り上げていました。第17報「ダイレクト・めーわく」でお報せしたように盗めば犯罪です。個人情報の名簿の販売を生業(なりわい)とするならば、罪を犯してまで情報を入手していては立ち行きません。合法的にどうやっているかの一例を、ニュースで紹介していました。なんと中古や廃棄したパソコンが情報源なのです。これらのパソコンは使用済み状態ですから、けっこうデータが残っている!のだそうです。
 そうそう、地元の先達である大工さんが解体現場でもらってきたというパソコンが当社にあります。当時は100万円以上した喉から手が出るほどほしかった最先端の製品(※1)で、まだちゃんと動きます。そのハードディスクにはしっかりデータが残っていました。謀会計ソフト会社(※2)がソフトとセットで売ったものと思われます。その後に新しいセットにしたのか、別の会計ソフトに乗り換えたかは知りませんが、お役ごめんとなったパソコンのハードディスクにはしっかりデータが・・・。

 ワープロの文書や表計算のワークシートなど、私たちの日常の作業でもよくファイルを削除します。ウィンドウズでは、削除するとそのファイルは「ごみ箱」に入ります。つまり「ごみ箱」の中にファイルが残っている状態です。
 ワープロで文書を作るのには四苦八苦しても、削除はあっという間もありません。そこでウィンドウズに「ごみ箱」機能がつきました(対抗していたマック(※3)にならったのです)。誤って削除しても「ごみ箱」から拾い出せるというものです。便利になったのですが、放っておくと、ごみ箱がいっぱいになりますので、ときたま「ごみ」を捨てます。「ごみ箱を空にする」という操作をすると、ファイルは完全に削除されます。そうなったら、もう「ごみ箱」から拾い出せません。
 ちなみに「ごみ箱」はハードディスク用です。フロッピーとかMOとかのファイルを削除しても「ごみ箱」には入りません。

 さて、ファイルを削除し「ごみ箱」も空にして、完全に削除しました。しかし、それでもハードディスクには消したはずのデータが残っているのです。
 先日、「誤って削除してしまったファイルを復元してくれ」という依頼があり、その手のソフトを使って探しましたが、このときは残念ながら見つかりませんでした。当社でも誤って消してしまったファイルをその手のソフト(※4)で無事に復元したことがあります。消してしまったと気づいたとき真っ青だったのが、復元できたとき真っ赤になった担当者の顔が印象的でした。

 では、どうして復元できるのでしょう。ウィンドウズではどんなものでもファイルという形で記録します。ハードディスクは、目次を記録する部分と本文を記録する部分に分かれています。目次に「どのファイルを本文部分のどこに記録した」と記録するのです。どこに、というのはハードディスクの記録部分は細かく区切られていて、それぞれ機械的な番号で識別することになっていて、その番号です。
 いうなればハードディスクはホテルのようなものです。○○という宿泊客(ファイル)を、1025号の客室(本体部分)に収容し、フロント(目次)に「お客の○○さんは1025号室」と記録しているようなものです。
 
 あるファイルを取り出すときは、まず目次でどこに本文があるか調べて、それから本文を取り出すのです。記録するときは、本文を記録してその目次を作ります。
 ところが、削除するときは、目次を消すだけで、本文はそのままです。本文は残っていても、目次が無いからそのファイルは取り出せないということです。ホテルでいえば、客がチェックアウトしたのに部屋はそのままという状態ですね。

 先のその手のソフトは、空き部屋を丹念に調べ、お客の痕跡からファイルを復元するのです。個人情報の名簿を生業とする方々は、当然空き部屋も探索するでしょう。削除したメールを復元して裁判の証拠にしたなんていう話を聞いたことがあります。アメリカでのことですが。ハッカー(黒客)も当然空き部屋を探索するでしょうね。
 その対策として先のその手のソフトには、空き部屋を掃除するルームメイクのような機能もついているぐらいです。削除してもハードディスクにデータは残っているというのが常識なのですね。

 ルームメイクをしているからといって安心してはいけません。数々のソフトが便利機能と称して私たちが気づくことなくデータを残していたりします。たとえば、
1.「自動バックアップ」機能なんてのがあって、複製が別な名前で、
2.送信メールの保存機能では、メールに添付した文書が送信データとして、
残ります。いずれも原本を削除しても残っています。まだまだソフトによっては消したつもりでも、何らかの形で残こしているものがあるかもしれません。使う側は意識していないのにデータが残っているなんて、ホテルの空き部屋よりおいしいですね。

 個人情報を扱ったパソコンを破棄するときは、すべてのデータを消してルームメイクするか、ハードディスクをぶっ壊すかしないと安心できませんね。

 とういう状況ですが、どこぞの国の『じゅーきねっと』を操るお役人、大丈夫だろうな!(大丈夫ですよねぇ〜?)

※1 東芝のラップパソコンJ−3100 米国の日本バッシングの原因になったとか
※2 ミロク経理
※3 アップル社のマッキントッシュとういうパソコン ウィンドウズとは別物
※4 シマンテック社 ノートン・ユーティリティ




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