2002.5.1

 

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箱物行政



 弊社の所在地の自治体(東京都墨田区)が音頭とってはじまった異業種交流グループがあります。区内の企業の経営者や責任者の集まり、というか寄合いです。もう十数年も続いていて、当社も数年前から「H1すみだ」というグループに参加しています。どんな集団かは、ホームページ(※1)を見てください。

 活動のひとつに、自治体が毎年秋に催す「フォーラム」の分科会を企画して開くというのがあります。自治体がIT、ITと騒ぐのもあって、昨年(2001年)は「顔の見えるインターネット」と銘打った分科会を企画しました。ITの代表みたいなインターネットが商売の道具になるか?というテーマです。ITを扇動するような講師は、とっくに自治体が招いてセミナーなんかをやっていましたので、ここはひとつ経験者を呼ぼうという事になりました。

 お呼びしたのは当社ともお取引のある旅行会社を経営していたA氏です。
 では、分科会の報告書(※2)から。
A氏は旅行業を16年間経験し、おしり3年はインターネット商売も経験した方でした。
失敗例としてインターネットは価格破壊に繋がる。他サイトとの格安航空券の見積合せに使われてしまい、格安競争のためコスト倒れになってしまうのが現状との事。そんなこんなで学んだ事は...。
他サイト(人)と同じ事をしていたら誰もホームページを見てくれない。
そこで考えられたのが自社の強みと弱みを見極め、強みを生かしたインターネット販売でした。
例えば東京にある会社の強みは、『東京を良く知っている事』にあり、地方の情報は東京の情報に比べればハッキリ言って少ない。であれば、東京→地方の旅行者でなく、『東京に来て下さい』のキャッチフレーズで、『地方→東京』への旅行者をターゲットにしたとの事。
ここがインターネットの強い一部分である事に改めて気付かされた。だってホームページは地方の人でも見れるんだもん。
「自社の強みを生かしインターネット商売も商売なのだから1円でも高く販売し、そのかわりにお客様に充分満足してもらう」これが成功(商売)の秘訣。
ps:東京地区の勉強なので社員教育費用もコスト削減できたらしい。

 東京のお店が地方へ観光に行くお客ではなく、東京に来るお客をねらう。コペルニクスも驚く発想の転換、目からウロコです。インターネット設備は安くすむといっても、店の前の看板と同じホームページではITの持ち腐れ。
 さらに、
ホームページの作成についてもお話下さいました。ホームページは毎週更新しないと飽きられてしまう物。プロに頼むのも手段だが素人に創らせても味があって面白い。
顔の見れない商売だからメール送信に心配りを...。文末に必ずハートを込めた一言を...。
メールマガジンにて顧客に毎月1回ニュースをメール送信(結構手間なので社員持ち回りにて対応、でもFAXや郵送よりは楽)。

 顧客へ月1回ニュースを、なんて新しい業務が増える。それもおざなりでは逆効果...。

 インターネットがあればうまく行くのではなく、道具としてこまめに使わないと意味が無い。機械は、黙っていても何かやってくれるわけではないのです。

 どうもコンピュータの不幸なところは、
コンピュータ占い≠ナ庶民にデビューして、考える機械などと売りつける輩がいて、自分で考えるなんてすごい機械だと騒がれたことなのです。鉄腕アトムやロボット三等兵ではないのです。自分では考えません。人間が指示しなければならないのです。
 とある大手メーカーにいたっては、プロ野球の景品を出すのに「コンピュータが選んだ最優秀選手」なんていって表彰していましたが、コンピュータが選んだのではありません。正しくは「コンピュータに選ばせた」あるいは「コンピュータを使って計算した」というべきでしょう。最優秀選手を選ぶ基準と手順(プログラム)は人間がコンピュータに記録したものだし、各選手のデータは、これまた人間がこまめにコンピュータに記録しなければ、まともな計算結果は出ません。

ITもコンピュータと同じで、人間が道具として使わないと意味がありません。そろえただけでは、パソコンはただの箱なのです。

 あっ、そうか。IT・ITと騒いでいたお偉方のやり方は、やっぱりお得意の『箱物行政』だったんだ(地方分権の自治体もか?)。




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