工作所発

ういんどーず注意報
2001.10.10
PDF



日本文化パソコン


 コンピュータは欧米で、とくに米国のNASAやペンタゴン、そして珪素谷(シリコンバレー)で開発されてきました。それもかなりあわただしく。NASAやペンタゴンの開発は自国の宇宙船やミサイルなどの兵器向けですから、米国の軍事覇権がかかっています。いっぽうシリコンバレーで産み出されたコンピュータは世界中に出まわっています。もちろん米国の経済覇権という目論見がないわけはありません。今出まわっているパソコンはシリコンバレーが本籍です。

 パソコンでの仕事をはじめたころの話です。当社のソフトを快適に使っていただくためには、まずお客さまにパソコンそれ自体に親しんでもらうのが早道、というわけで画面の壁紙に親しみがわくミッキーマウスなどアニメキャラをさがしました。まてよ、パソコンは外国の物という抵抗感も取り払いたい、ならば、古今亭志ん生だ、とさっそく購入してプレゼン用のパソコンに入れました。好評だったかどうか、少なくとも抵抗感は和らいだはず...。

 シリコンバレー生れのパソコンは米国の文化がいっぱい詰っています。当然こちらの文化とは相容れない点が沢山あります。

 何といっても縦書きではありません。ワープロもふくめ縦書も印刷できるという程度で、縦書きのために作られたパソコンはありません。パソコンやワープロのせいだけではないでしょうが、住民票をはじめお役所も横書き文化になってしまいました。新聞・雑誌は縦書き文化なのに(アラビア向けは右書きなのだろうか?)。

つぎは度量衡。長さの単位はインチを使ってきます。ヤード・ポンド法ですね。モニタのサイズは、テレビの時代から14インチとか17インチだとかでした。あるソフトでは、センチで入力すると、たとえば1.5センチが1.501センチと表示します。どうやらインチを基準にセンチに換算しているようです。メートル法という国際規格が定められているにもかかわらずです。さらに、計り方も違います。われわれは小数点を用いますが、米国生れは分数を使います。たとえば8分の5インチとか。0.625とは表現しません。

 余談ですが、わが国では早くからメートル法に切替えました。慣れ親しんだ尺貫法を使うと罰せられます。ですから1升ビンは1.8リットルビンで売っています。インチで物を売っても罰せられないのでしょうか?ところがどっこい、尺貫法は滅びていないのです。電気釜は3合炊きとか、5合炊きとかで売っているではないですか!ちゃんと何合目の目盛りもついています。そうそう簡単に文化は滅びないのです。でもお米はキロで買ってきますが...。

 次は第4報でお報せしたプロポーショナル・フォント。アルファベットは1文字1文字違う幅で表示します。日本語は易しい字でも難しい字でも枡目に1文字づつを入れますので、どの文字も幅が同じです。日本用のパソコンには日本語用にプロポーショナルではないフォント(固定ピッチフォント)も入っています。
ホームページを作るときでも、固定ピッチ指定にしておくと、われわれにとっては読みやすい=美しく出来ます。

 その次は日付の表現。われわれは年・月・日の順で表現します。たとえば01年10月5日。表現方法は世界中いろいろで、特に米国では10月5日01年というように月・日・年の順で表現するのが文化のようです。これを見落とし、第19報でお報せした2001年問題をおこしてしまいました。

 順が逆になるといえば、姓名もそうですね。米国では名前が先です。米国製の日本語対応メールソフトを使っていますが、名前の欄が先で姓が後になっています。『茂 山下』なんて気持ち悪いので、名前の欄に姓と名の両方『山下 茂』と入れています。日本語対応ではあるが、日本文化対応ではないのです。

 違いがあるのは当然で、気候・風土が違うのですから生活も違いますし、受け継いできた歴史も違います。パソコンの異文化に慣れることも必要でしょうが、無知やりおしつけられるのは、どうにも癪にさわります。しかもこれが世界標準(グローバル・スタンダード)だ、などとえらそうな態度です。こちらは一所懸命慣れて、仕方なしに使っているのです。

 ところで、わが国のメーカーはわれわれの文化に相応しいパソコンづくりに挑戦しているのでしょうか。易しいではなく、優しいパソコンづくりを。とは言っても、ウィンドウズを分析・改良しようにもマイクロソフト社はウィンドウズの情報公開をしていません。ただただウィンドウズを買え、だけです。同社の社長の独占と米国の経済覇権が絡んでいるのはいうまでもありません。そう思うから、よけいに腹立たしいのでしょう。

 横暴なおしつけがパソコン程度ならまだ我慢するとして、文化全般から政治・経済、生活、そして宗教や各人の生き方にまで及んできたら、腹立たしいではすまなくなるかもしれません。先日のニューヨーク・マンハッタンのいわゆる同時多発テロ。なぜ、どうしてこんなことがおきるのか、その遠因に米国をはじめ西欧の横暴なるおしつけがあると思うのです。覇権者がこのままだったら再び不幸がおこると思うのは、私だけではないでしょう。



 飛行機に乗りあわせた人々、崩壊したビルに居あわせた人々、救助活動の消防士たち、そして自爆した犯人たち、不幸にも生命を失った方々のご冥福をお祈りします。


 TOPへ