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データの基地 この映画の頃のコンピュータは、私どもが「ファイル・システム」と呼んでいる現況を記録しておく方式です。たとえば、会計の売掛表や買掛表、試算表などの帳簿の原簿に現況を記録しておきます。つまり最新の状態にしてあります。日々の売り買いの伝票など取引データをそれぞれの原簿につき合わせて、現況を書き換えた新たな原簿を作っていくというものです。原簿も取引も磁気テープに記憶していました。 なにしろ計算機資源が小さかったですから、原簿に記録するデータは業務に必要な最低限に抑えられていました。そして取引データは役目が終われば破棄し、古い原簿も破棄です。もちろん磁気テープは再利用、保管スペースも小さいですから。 現在では、磁気テープに替わって磁気ディスクが主役です。音楽のカセット・テープは早送りして、狙った曲が出てくるまで待ちますが、円盤のレコードは狙った曲の位置に針を落とせます。これと同じで磁気ディスクは狙ったデータをさっさと読めます。テープを回してデータが出てくるのを待ってなくていいですから、入力した取引データを即座に原簿とつき合せて更新できるようになりました。即時処理ですね。 ところで、つき合せる原簿のデータは現況を記録したものですから、けっこう更新は面倒なんです。たとえば、ある日付の取引データで原簿を更新した後に、それより前の日付の取引データが来たら… なんて、とてもプログラマ泣かせ。そうそう、銀行の預金通帳は、しらっと日付が前後した記帳がされていることがあります。残高は記帳した順に計算されてますから、ある日時点の残高が…？ それではと、取引データをそのまま記録してしまおう、となりました、磁気ディスクの容量はとても大きくなっていますから。ある日時点の状況は、取引データをすべて調べて算出しようとなりました、コンピュータの計算速度がとても速くなりましたから。データベース・システムの誕生です。 ただただ事実を記録し、現況などを計算する。会計ソフトなら、伝票をすべて記録しておき、買掛や売掛表、試算表に貸借対照表や損益計算書、決算書などは、その都度、期間内の伝票データを調べて作成するようにプログラムするのです。データベース・システムはコペルニクス的な発想の転換なんです。 私どもの会社の会計ソフトは自作です。データーベースですから、伝票をすべて記録しているので、目的外の思わぬ情報が引き出せそうです。たとえば、そろそろ職場のトイレットペーパーがきれるなんてのもわかるでしょう。いつ購入したか伝票の履歴を調べるべくプログラムすれば、ですが。 私どもがお客様の依頼でソフトを考案するとき、会計なら伝票にあたる事実たるデータはどんなものか、それをどうデータベースにするか、から始まります。決算書にあたるどんな情報を欲しているかを問われたら、データベースに事実を記録してあるので、あとはプログラムでいかようにも結果を引き出せるというものです。プログラマの腕の発揮しどころです。 ところが、データベースを考案する時にコペルニクス的に発想を転換したつもりでいても、ファイル・システムの考えに陥ってしまうことがあります。あんな情報が欲しい、こんな情報を取り出したい、とのご要望があっても、現況の記録はあるのですが、履歴が無いのでご要望にこたえられません、なんてことではデータベースではありません。反省しきり、考案しなおしです。
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