工作所発
うぃんど〜ず注意報 第10報
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Eメールはがき


 『コンピュータの仕事をしているのだから、自分のコンピュータを持とう。自分への投資だ』と思い立ったのは、今から10何年も前、ソフトウェア会社に勤めていた頃でした。当時、東芝からラップトップ型の画期的なパソコンが出たばかり。鞄ぐらいの大きさで、白黒の液晶ディスプレイとキーボードの一体型。炬燵の上でも寝床でも使える、まさに個人用(パーソナル)コンピュータです。ソフトウェアは当時定番のワープロ「一太郎」と表計算「ロータス123」!!
 ところが、家庭にはワープロを作るような文書も無く、ましてや表計算を使うようなデータがありません。数年分の電話代の請求書を表計算ソフトに入力して、年月順に並べ替え、棒グラフにした程度です(おかげで毎年4月と10月に電話代がかかることがわかった)。会社の仕事を自宅でやるために買ったわけではないし、そんなことをしたら癪に触ります。子供とゲームをと思いましたが、ファミコンのゲームのほうが面白い。さて、どうしたものか....

 あるとき、ご接待の宴席でお相手の方が「うちの息子がパソコン通信をやってるようで・・・」と言うのを小耳にはさんで、ふたたび自分への投資。モデムを買い、ニフティサーブ(*1)の会員になりました。通信を始めてびっくり。コンピュータには自分でデータを入力しなければグラフも何も出てこないはずなのに、電話線の向こうからいろいろな情報がやってきます。当時は文字だけですが、とにかくデータを入れなくても情報が見られるのには、感激しました。きっと初めてラジオを聴いた、テレビを観た、そのときの感激と同じでしょう。

 インターネットが話題になったのは数年前です。さっそくプロバイダ(*2)と契約して、初めてつないだときも感激しました。パソコン通信では会員になった通信会社に登録された情報しか見られなかったのに、外国のホームページも見られるのです。パソコン通信で外国のパソコン通信に接続してくれるサービスもありますが、特別な料金が要ります。インターネットでは不要です。
 インターネットで見られる情報は各国政府の公式情報から、ゲリラの声明まで何でもあり。原爆の作り方や麻薬の売買所まであるようです。もちろんアダルトも。これが流行るきっかけでしょう(英語の勉強をおろそかにしてきた自分を悔やんでいます)。

 そしてインターネットはあっという間に流行りました。コンピュータメーカーはインターネットがすぐできるパソコンのCM(インターネット・テレビもありました)。ハードウェアばかりではありません、ゲーム感覚でインターネットのできるソフトもCMをやっています。もちろん天下の通信社NTTもぬかりなくインターネット用回線のCMをやっています。電話機メーカーと第二電々も黙っていません。先日買い換えた電話機にはオプションでインターネットのメールサービスがついているのです。猫も杓子もインターネットってな状況です。そして、ついに証券会社までもインターネットでの売買サービスを始めました。

 当社にもインターネットのホームページがありますが、もっぱらメールで原稿を送ったり、連絡をとったりする程度です。もうひとつ9報でお知らせしたバグ対策探しに使っています。

 いつでしたか、お客様から「インターネットのEメールは使えるかね。」と問われ、「『はがき』だと思ってください。何処の誰に見られるか保証はないですから。」とお答えしました。「ならばニフティサーブはどうなんだ。」「封書ぐらいですかね。」

 パソコン通信(ニフティサーブ)はその会社のコンピュータだけを使いますから、外にメールが出ることはないだろうし、それをパソコン通信社との契約で保証しているはずです。言ってみればパソコン通信社のコンピュータはたった1つだけの私設郵便局なのです。そこに会員の私書箱があって、会員はそこにメールを出しに行ったり取りに行ったりしているようなものです。
 インターネットは世界中の私設郵便局どおしで連絡をとりあうものです。ですからメールは何処の郵便局のどの私書箱宛≠ニ指定して出します。まず自分の加入した私設郵便局にメールが届くと届け先に近い別の私設郵便局に回します。回された私設郵便局もさらに届け先に近い別の私設郵便局に回します。回された私設郵便局もさらに・・・を繰り返して届け先の私設郵便局に届きます。最初にインターネットの仕組みを説明してくれた同業の社長さん(*3)は「バケツリレー」と表現していました。

 さて、インターネットをやるためには私設郵便局すなわち接続業者(プロバイダ)と契約します。が、あくまでも接続の契約です。そのプロバイダ内でのメールの守秘事項はあるでしょう。ですが加入者はメールが回される別の私設郵便局とは契約していません。私設郵便局どおしの国を超えた仁義しか保証はないのです。ですから、途中の私設郵便局の不手際でメールが行方不明になることもあります。黒客(ハッカー)対策の甘い私設郵便局が密かに襲われていてメールが盗み読みされるかもしれません。さらには仁義無き私設郵便局がメールを盗み読みしているかもしれません。送ったメールがどこでどうなっているかわかりません。ですからEメールは『はがき』なのです。くれぐれもクレジット番号など記入しないほうがよいでしょう。

 ところで、証券会社のインターネット売買サービスは、顧客が注文のメールを出すのと同じでしょう。どう守秘するのでしょうか、気になります。

 
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