工作所発
うぃんど〜ず注意報 第7報
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ソフトのこころはハードなの

 まだ市販されていないソフト(マイクロソフト社のオフィス2000)の評価版がわが社にやってきました。
さっそく試した女子社員、しばらくしてから 
「『しばらくお待ちください』とかメッセージが出ると、ほんとうに待たされるのね」
とぽつり。ソフトの説明書にある『必要システムの要件(動作環境)』を彼女が使っているパソコンは十分に満たしています。すなわち、
オペレーティングシステム(OS):Windows95か98のところをWindows98
プロセッサ(CPU):Pentium 133MHz以上のところを   Pentium MMX 233MHz
メモリ:20MB以上のところを 128MB
です。
どうもソフトをバージョンアップすると、動作は前のに比べて遅くなったような気がします。このソフトには限りませんが。
 これと似たような話はたくさんあります。そのうちのひとつ。
 あるお客さんが新しいワープロソフト(ジャストシステム社 一太郎8)を買ったのですが、動くには動くのだけども、遅くて遅くてほんとに遅くて、とても仕事にならないと相談に見えられました。ワープロソフトのパッケージに書いてある『動作環境』を見たら、OSやCPUは満たしていたのですが、メモリが足りませんでした。ですからメモリを増設するようにすすめました。それと、今度ソフト購入する時は、必ず動作環境を確認するように、わからなければ店員に聞いてでも確認するように、念を押しておきました。
 新しいソフトは新しいハードを欲しているのです。
 こんな話はパソコンが流行ってからの話ではありません。十数年前に大型計算機の仕事に携わっていたころ、当時の社長から聞いた話です。
「プログラムをコンピュータのメーカー(このときはIBM社)に頼むと、プログラムが出来上がるころ、『このコンピュータでは小さすぎて動きません。大きくしましょう』と言ってくる。」
 どうしてこんなことが起きるのでしょう?ハードとソフトのメーカー同士の販売戦略で意図的に新しいコンピュータでないと快適に動かないようにしているのかもしれません。
 そうそう、当社の失敗談もあります。あるお客さん用にソフトを製作したのですが、さてお客さんのパソコンで動かすと、メモリ不足!、動きません。当社で製作に使ったパソコンのほうが新しいので『動作環境』がよかったのです。しかたがないので、当社の持ち出しでお客さんのメモリを増設してしのぎました。
 メーカーの陰謀はともかくとして、ソフト屋から見ると、新しいコンピュータは魅力なのです。ハードが遅ければ、ソフト屋は速く動作させるためにけっこう工夫します。客には背を向けてでもハードと向き合ってプログラムを作っていたわけです。ところが、その工夫が要らなくなれば、お客のほうを向いてプログラムが作れます。つまりお客の要望をできるだけ容れ、しかもソフトの製作費はハードへの工夫が要らない分、安くできます。ソフト作りの苦労はハードがよくなればなるほど減っていくのです。
 ただし、いくらお客のほうを向いたといっても使いもしない機能を盛りだくさんつけてたところで、お客はうんざりするだけでしょう。単なるウケねらい。お客のどこを見るかでしょうね、ソフトメーカーは。
 ソフトが古いままで、ハードが新しくなっていくとどうなるでしょう。あるお客さんのところではマイクロソフト社のアクセスを使って業務用のプログラムを作っていますが、この5年間の度重なるバージョンアップに目もくれず、2.0のままです。アクセスのバージョンアップにお金をかけるよりも、新しい業務用のプログラムをもっと作ろうということです。いっぽうパソコンのほうは、新品も安くなってきたので新しいのに買い換えました。すると、
「どうしてこんなに速いの!今までは何だったの!」
とお客さんの感想。
 ところで、速くする工夫のひとつにデータ量を減らす方法があります。つまり、動かすデータ量が少なければ、その分速いという単純な理屈。そこで、西暦の年の上2桁は19に決まっているから下2桁で済ましてしまえ・・・・・・・・・・これが2000年問題が起きることになった原因のひとつなのです。
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動作環境
 パソコンは本体とキーボート、マウス、ディスプレイ、スピーカなどから構成されています。本体には、マザーボードにハードディスクとフロッピーやCD−ROMも接続されています。マザーボードには、プロセッサ、メモリがくっついています。ソフトの動作環境で問題になるのは、プロセッサとメモリ、そしてハードディスクです。それぞれどんな動作をしているのか人間の仕事風に例えてみましょう。
プロセッサ(CPU:Central Prossesing Unit)
言うなれば電卓。233MHz(メガヘルツ)とかの数値は、1秒間に何回電卓をたたけるかということ。数値が大きければ大きいほど速い。
メモリ(主記憶装置)
作業机でしょう。ここに、計算書(プログラム)と書類(データ)を並べて、計算書どおりに電卓をたたいて書類に結果を書き込むのです。32MB(メガバイト)とかの数値は、作業机の広さ。広ければ広いほど計算書や書類をたくさん並べられます。
ハードディスク(記録装置)
書庫にあたります。4 GB(ギガバイト)とかは書庫の大きさです。ここに計算書と書類をしまいこむのです。
 さて、ワープロソフトで先日作った案内文を修正するとしましょう。まず、書庫に行ってワープロソフトという計算書を取ってきて作業机に並べます。つぎにもう一度書庫へ行って案内文という書類を取ってきて作業机に広げます。
 あとは作業机の上で電卓をたたきながら、文字の大きさや、位置を計算して案内文を直していくわけです。ですから電卓をたたく速さが速いほど速い。
 でも、作業机に計算書が並べきれないと、計算の終わった計算書を破棄して、続きの計算書を書庫に取りに行きます。ところがこの書庫、とても離れたところにあるのです。感覚的に言えば、電卓と作業机はビルの最上階の部屋で、書庫は地下倉庫といったところ。エレベータが来るのを待ったりしなければなりません。電卓をたたく速度に比べたら、書庫から計算書や書類を出して来たりしまったりするのにはとても時間がかかり、遅いのです。
 ですから、速くするには、作業机に計算書や書類ができるだけひろげられるように広くする(メモリを増設)か、コンパクトな計算書(古いバージョンのソフト)を使うかです。

 
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