《地球的課題の実験村》とは
“腹八分の思想”を実現する場
地球的課題の実験村代表 柳川秀夫

 「地球的課題の実験村」は成田空港に反対し、自分たちの農業を見つめ直すなかで生まれました。私たちの社会は、地球規模のさまざまな環境問題を引き越しています。人間の活動が地球が消化できる限界を超えてしまった結果です。さらに、富が一部に集中し、弊害だけが豊かさを享受できない人々にも等しく及ぶという深刻な社会問題を抱えています。未来のいのちをいかに守るか―私たちに課せられた重い課題です。そのためのさまざまな試みをする場として、私たちは「地球的課題の実験村」を立ち上げました。
 私たちは空港問題の解決のために、政府を相手に「児孫のために自由を律す」と題した考え方を提起しました。くだけていえば「腹八分で足るを知る」ということです。
 いったん味わった飽食をどう抑えるか。地球はおてんと様があって、大きな生態系のシステムを形づくっています。また自然界には、すべてに固有の時間があります。農の世界でいえば、稲の育つ時間にしたがって、時間を惜しまず、稲株一つひとつの個性を引き出すことが、わざであり、やりがいであり、文化の発展でした。自然の理をよく知り、それを上手に応用し、ものをつくる。それを「農的価値」と私たちは表現しています。
 現代は便利さが進むなかで、感じとる力が失われている時代です。物事を本質的に理解するには、感覚でとらえることが大切です。実験村は人々が自然界と同調できる感性や考え方を養う場なのです。ここから効率を至上課題とする工業的価値観とは違う“もうひとつの価値観”に立った腹八分の思想とくらしが生まれます。
 実験村は海外を含むさまざまの人たちとの交流の場にもなっています。違う体験をもつ人たちとの出会いは、考え方のベースを豊かにしてくれます。同じ作物を作り続けると連作障害が出ます。人間関係も同じかもしれません。(やながわ・ひでお)