地球的課題の実験村

<連続講座>

入り会い再考・再生

=脱グローバリゼーション試論=

 地球規模の市場競争、グローバリゼーションの嵐が吹き荒れ、貧困が、飢餓が、環境破壊が、そしてそこから生れる絶望を抑えこむための武力による抑圧が地球を覆っています。私たちはそうした状況にどう対峙し、そうではない世界を構想するのか。その手がかりを“入り会い”に求め、人と人とが出会い、共に生きる場として、地(じ)に生きる人々がつくりあげてきた“共”領域を見直し、再構成することをめざす連続講座を開きます。
主催
地球的課題の実験村
脱WTO草の根キャンペーン実行委員会
第1回
5月11日(水) 18:30〜 「入り会いの思想を掘り起こす

講師:
花崎皋平氏 (哲学者・市民運動家・札幌自由学校「遊」共同代表)

 奪われ、消し去られたアイヌ民族の入り会い再生運動を手がかりに現代社会の中で入り会いがもつ意味をさぐる。

第2回
6月8日(水) 18:30〜 「入り会いは国家を超えられるか

講師:
太田昌国氏(民族問題研究者・市民運動家・編集者)

 グローバリズムに融け去るかと思えた国家が奇妙な形で肥大化し抑圧装置化している。国家にからみとられない共同性はあるのか、民衆運動の実践と考察を踏まえ提起する。

第3回
7月13日(水) 18:30〜 「開発の時代を超えて

講師:
樋ケ守男 (農業・東峰住民・地域運動家)

 ある日突然、集落の神社の森を機動隊が取り囲み作業員がやってきて伐採した。成田空港直下の東峰集落は共同の森の総有の権利を掲げて裁判に訴え、全面勝利する。入り会い・共同・内からの民主主義、この運動が提起した課題を当事者が報告。

第4回
9月12日(月) 18:30〜 グローバル資本主義と入り会

講師:
小倉利丸氏(富山大学教員・ピープルズプラン研究所共同代表)

 弱者を、生命を飲み尽くすグローバル資本主義に、いかなるオルタナティブで対峙するのか。共生の仕組みと思想「入り会い」を手がかりに、“もうひとつの世界”に迫る。

第5回
10月12日(水) 18:30〜 “地域自立”は可能か
−地域通貨の思想と仕組みから読み解く−

講師:
泉留維氏(専修大学教員)

 グローバリゼーションは自然、生命、人権などと共に地域そのものを破壊している。地域とは、地域が自立するとはどういうことなのか、その課題と道筋を、地域通貨を切り口に解き明かす。

第6回
11月9日(水) 18:30〜 総括討論「ではどうするのか

問題提起:
「いま辺境が最前線に」
−世界の全体性回復をめざすジンバブエ黒人小農の生存のための実践−

 講師:壽賀一仁氏(日本国際ボランティアセンター)より報告いただき、同報告を軸にしながらいま私たちは足元で何ができるか、何をしなければならないかを話し合う。

場所
総評会館 501号室 (千代田区 神田駿河台 3−2−11)

*J R
中央線・総武線:御茶ノ水駅 聖橋出口から徒歩5分
*地下鉄
千代田線:新御茶ノ水 丸ノ内線:淡路町 都営新宿線:小川町 B3出口の上

参加費
1回 700円(学生 500円)6回通し 3000円(学生 2500円)
申し込みは当日でも可。
お申込
FAXあるいはメールで、大野和興まで(お問合せも)
    tel/fax:0494-25-478 mail:wakou@mpd.biglobe.ne.jp

    住所:〒368-0023 埼玉県秩父市大宮5734−4

いまなぜ入り会いなのか
自営農業記者 大野和興

 もう20年も前のことだが、前田俊彦さんから突然電話があった。
 前田さんといってもいまの若い人は知らないだろうから解説すると、戦前は筋金入りのコムニストで刑務所に放り込まれ、戦後は地域で村長なども務めて思想の具体化をはかったりし、田んぼと畑から独自の思想を練り上げた在野の思想家である。そのころは権力との激しい対峙が続く三里塚に庵を構えて、生き方と闘争を重ね合わせる自在な人生をつくりあげていた。

 その前田さんから「大野、入り会いの文献を至急取り揃えろ」というご下命であった。ほかならぬ「じいさん」(僕らはみんなそうよんでいた。そしてそのじいさんの年に僕もさしかかっている)の頼みなので、大急ぎで何冊かの本や資料集を集め(金のないフリーのもの書きにはこたえる出費だったけど)て送った。
 国際空港という巨大開発と相対しての地域の農民の闘いもすでに20年に及ぼうとしていた。いったい何を求めて闘い続けているのか、その闘いから何を紡ぎ出そうとしているのか、それを突き詰める中で出てきたのが「入り会い」だったのだろうと思う。そこにじいさんは人々の共同性の拠点を見出し、そこから三里塚を越えた世直しを構想したのではないか。

 この連続講座の主催団体のひとつ「地球的課題の実験村」は、ある意味で前田のじいさんの思想の正当な継承者でもある。三里塚の百姓と市民が共同作業で始めてすでに5年が経ったこの運動は、三里塚を根拠地にしながらも地球規模で人と人、人と自然が入り会い共生する場を作ろうというものだ。その思想を、三里塚の百姓の柳川秀夫(実験村共同代表)は「要するに腹八分で行こうということだべ」とぶっきらぼうにいう。いまの世の中は欲望を欲望のまま発散させることで成り立っている。そうではない世の中を作るには価値観そのものの転換が必要だと柳川秀夫はいっているのだ。もう一人の三里塚百姓の石井恒司は「土地や土だけでなく、畑の上を吹く風だって俺にとっては農業なんだ。そんなものもって行けるわけねぇべや。だから俺はここを動かないんだ。動きたくても動けねぇんだよ」という。
 40年近くにわたる命がけの百姓のたたかいが獲得したこの思想を、具体的な世直しの運動につなぐ鎖の輪として、私たちは、再び「入り会い」にいきついた。

 もうひとつの主催団体「脱WTO草の根キャンペーン」は、いま地球規模で人と自然・生命を壊しているグローバリゼーションに対して、「もうひとつの世界がある」という旗を掲げて運動している市民団体である。では、そうした世界をつくる原点をどこに求めるのか。いま世界中のグローバリゼーションに対峙する人々の運動が、そのことを求めて実践と思索を始めている。

 地域のたたかいとグローバルな運動が、ともにいきついた先に「入り会い」があった。資本がつくりあげた価値観にとらわれない別の価値観をもち、国家にとらわれず、外の世界に開かれていて、自主・自律のもとに人と人、人と自然が共同し助け合って生きていく場はあるのか。この連続講座を通して、そのことを考えてみたい。





表紙へ